聖心

聖心（せいしん）とは

聖心（みこころ）とは、イエス・キリストの人類に対する愛の象徴である心臓、およびそれに対する崇敬を意味します。特にカトリック教会で盛んですが、聖公会や一部のルーテル教会でも行われています。東方典礼カトリック教会でも見られますが、反対意見もあり「典礼のラテン化」とみなされることもあります。正教会や大多数のプロテスタント諸派では、この崇敬は見られません。

聖心崇敬の歴史

初期の教会では神の愛への信仰はありましたが、キリストの心臓への崇敬は最初の千年間には見られませんでした。11〜12世紀になると、ベネディクト会やシトー会の修道院を中心に、アンセルムスやベルナルドゥスの思想の中で萌芽が見られました。大聖ゲルトルードや聖メヒティルト、ボナヴェントゥラもこの崇敬に関わっていました。

13〜16世紀には、個人やフランシスコ会、ドミニコ会などの会衆によって実践されましたが、これはあくまで私的なものでした。16世紀に入ると、キリスト教神秘主義から禁欲主義に流入し、特定の祈祷として確立しました。

ジャン・ユード（1602年-1680年）は、この崇敬を公のものとし、特別の祈祷や祝日を設けました。当初、聖母マリアの汚れなきみ心崇敬の一部でしたが、後に独立し、1670年8月31日に最初の「聖心の祝日」が祝われました。この祝日は他の会衆にも広がり、パレ・ル・モニアルでの聖心崇敬と融合しました。

マルガリタ・マリアの神秘体験

現代の聖心崇敬の隆盛には、聖母訪問会の修道女マルガリタ・マリア・アラコクの神秘体験が大きく影響しています。彼女は、イエスが自身の心臓への愛を示す奇跡を広めることを望んでいると告げられ、償いの愛の信仰、特に月の最初の金曜日のコムニオンと聖時間の信心を求められました。

1675年6月16日には「大いなる出現」があり、イエスは「人々を愛したこの心臓を見よ」と述べ、償いの祝日を執り行うように求めました。マルガリタ・マリアはド・ラ・コロンビエール神父に相談し、神父は彼女の報告を書き記し、広めました。ド・ラ・コロンビエール神父の日誌は1684年に出版され、聖心崇敬の普及に大きく貢献しました。

教皇の認定

マルガリタ・マリアの死後も聖心崇敬は広まり続けましたが、教皇庁は慎重でした。1693年に聖心友愛会に贖宥状を与え、1697年には聖心の祝日に「5つの傷のミサ」を行うことを認めましたが、カトリック教会全体の祝日とはしませんでした。しかし、1765年にフランスの司教座によって準公式的に祝日が認められ、1856年に教皇ピウス9世によってローマカトリック教会全体の祝日として正式に認められました。

1928年、教皇ピウス11世は回勅『ミゼレンティシムス・レデントール』で、マルガリタ・マリアの神秘体験を正式に認め、イエスが聖マルガリタの前に現れ、聖心への崇拝を促したと述べました。2006年、教皇ベネディクト16世も聖心崇敬の重要性を再確認しました。

礼拝と崇敬

聖心の祝日制定とともに、奉献、贖罪、礼拝が導入されました。教皇レオ13世は、全ての人を聖心に奉献し、これを自らの任期中の「偉大な行為」と述べました。1850年頃から、団体や国家が聖心に捧げられるようになり、1873年にはエクアドルが最初の国家となりました。

聖心の崇敬は、聖歌、挨拶、リタニからなり、カトリック教会の礼拝でよく行われます。聖心の祝日は、ペンテコステの19日後の金曜日に祝われます。また、家庭では、聖心の図像を祭壇に掲げ、家族が聖心に奉献する儀式も行われます。

団体の名前

「聖心」は、カトリック教会の団体、学校、病院など、世界中で広く用いられている名称です。イエズス・マリアの聖心会や、イエスの聖心会など、多くの修道会が設立されています。

聖心の表象

聖心は、燃える心臓として描かれ、槍に突かれた傷、いばらの冠、十字架、出血などが描かれることがあります。イエスが心臓を指し示す図柄も用いられます。傷といばらの冠は受難を、炎は愛の力を象徴しています。

カトリック教会の信者は、聖心を描いた小さな紙を身につけることが推奨され、スキャピュラーとして首から下げます。また、聖母マリアの汚れなきみ心と対にされた表現もみられ、不思議のメダイにも聖心とマリアの御心が描かれています。聖心の図柄は、大衆文化の中でもタトゥーなどに用いられることもあります。

脚注

この記事にはパブリックドメインである次の百科事典本文を含む: Herbermann, Charles, ed. (1913). "Devotion to the Heart of Jesus". Catholic Encyclopedia. New York: Robert Appleton Company.

外部リンク

Devotion to the Sacred Heart of Jesus, which was commanded to be written by Jesus Himself through St. Margaret Mary
The Sacred Heart Prayer.
Devotion to the Sacred Heart of Jesus, from Catholic Encyclopedia.
Catholic Devotion to the Sacred Heart of Jesus.
* What is consecration and commitment to the hearts of Jesus and Mary

もう一度検索