聖母教会 (ドレスデン)

聖母教会の歴史と再建



聖母教会（Dresdner Frauenkirche）は、ドイツ東部のザクセン州ドレスデンにある福音主義の教会です。この教会は、その壮麗なバロック建築と、第二次世界大戦での破壊と再建の歴史で知られています。ドイツ福音主義教会に属し、ザクセン福音ルター派州教会の一部です。

バロック様式の誕生


18世紀初頭、ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世は、自らがカトリック教徒でありながら、ルター派の教会として聖母教会の建設を命じました。1726年から1743年にかけて、ドレスデンの建築家ゲオルク・ベーアによって設計され、彼は祭壇、講壇、洗礼盤を信徒の正面に配置するという革新的な設計を行いました。この配置は、ルター派の典礼精神を反映したものでした。1736年には、著名なオルガン製作者ゴットフリート・ジルバーマンが、3段の手鍵盤と43のストップを備えたオルガンを製作し、ヨハン・ゼバスティアン・バッハがこのオルガンで独奏会を開いたとされています。

卓越した建築技術


聖母教会は、高さ91.24メートル、縦50.02メートル、横41.96メートルで、その外観で最も特徴的なのは、直径26.15メートル、上部が約10メートルの巨大なドームです。このドームは「石の釣鐘」とも呼ばれ、1,200トンの砂岩で構成され、内部の支柱なしに自立しており、ミケランジェロのサン・ピエトロ大聖堂に匹敵する技術的偉業でした。1760年の七年戦争では、プロイセン軍の砲撃を受けましたが、ドームは損傷を免れ、教会の堅牢さを証明しました。この教会のシルエットは、ベルナルド・ベッロットやヨハン・クリスチャン・ダールなどの画家によって描かれ、ドレスデンの象徴となりました。また、1849年には、5月蜂起と呼ばれる革命運動の中心地となり、教会はバリケードで囲まれ、反乱軍の拠点となりました。

戦争による破壊


1945年2月13日、連合軍によるドレスデン爆撃により、聖母教会は大きな被害を受けました。教会は2日間の爆撃に耐えましたが、巨大なドームを支える8本の砂岩の柱は、約650,000発の焼夷弾による熱に耐えきれず、2月15日の朝に崩壊しました。教会の内部は摂氏1000度に達し、6,000トンもの石材が崩れ落ちました。しかし、祭壇やイエスの苦悩を描いたレリーフの一部は、奇跡的に無傷で残りました。その後、教会は45年間廃墟のまま放置され、黒ずんだ石材はドレスデンの中心部に積み上げられました。

復興への道のり


戦後、ドレスデンの住民は教会の瓦礫を回収し、将来の再建に備えました。1982年、廃墟は平和運動の象徴となり、爆撃記念日には多くの人々が集まりました。1985年、ドレスデン市は聖母教会の再建を決定し、1989年には市民団体「聖母教会復元」が結成されました。この団体は国内外からの寄付を集め、再建活動を推進しました。アメリカの非営利団体「フレンズ・オブ・ドレスデン」や、イギリスの「ドレスデン・トラスト」などの国際的な協力も得られ、1億8000万ユーロの再建資金が集められました。

再建プロジェクト


1993年1月、ゲオルク・ベーアのオリジナル設計図に基づいて再建が開始されました。瓦礫は詳細に調査され、8,500以上のオリジナルの石材が再利用されました。コンピューター画像化プログラムは、建築家がオリジナルの石の位置を特定するのに役立ちました。祭壇の破片も洗浄され、新しい祭壇の一部として再利用されました。また、モルタルや塗料の品質を調査するために、古い写真や発注書が活用されました。入り口のオークのドアの複製には、結婚式のアルバムの写真が参考にされました。金メッキされたオーブと十字架は、ロンドンの職人によって製作され、ドームの頂上に取り付けられました。2003年には、7つの新しい鐘が鋳造されました。ジルバーマンのオルガンのレプリカは作られず、代わりにフランスのダニエル・ケルンによって新しいオルガンが製作されました。このオルガンは、ジルバーマンのオルガンの音栓を再現しつつ、さらに新しい機能も備えています。

再建の完了とその後


再建プロジェクトは2005年に完了し、当初の計画より1年早く完成しました。聖母教会は宗教改革記念日の前日に再公開され、ドレスデンのシンボルとして再びその姿を現しました。再建された教会は、希望と和解の象徴として人々に感動を与え、多くの観光客が訪れています。教会の歴史と再建に関する展示が、ドレスデン市立博物館で行われています。毎日祈祷が行われ、日曜日には礼拝が行われています。再建後、聖母教会は多くの人々に希望を与え、ヨーロッパ各地の再建プロジェクトを活性化させました。しかし、再建には、古い石材の配置と、コンピューター技術の利用について、哲学的な議論も起こりました。再建された聖母教会は、過去の悲劇を乗り越え、平和と希望を象徴する重要な場所となっています。

参考文献


関連項目

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