肝付兼重

肝付兼重：南北朝時代を駆け抜けた武将

肝付兼重（きもつき かねしげ）は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて活躍した武将で、肝付氏の8代目当主です。彼は激動の時代を生き抜き、その生涯は、日本の歴史における重要な転換期を映し出しています。

家督相続

兼重は、6代当主・肝付兼藤の次男として生まれました。当初は、肝付氏の庶流である荻原氏の家督を継ぎ、日向三俣の領主として活躍していました。しかし、兄である7代当主・兼尚が訴訟問題で鎌倉に滞在していたため、その代理として領地経営を任されました。さらに、兼尚の嫡子・兼隆が幼少であったことから、兼重は本家の家督をも相続することになりました。

南北朝の争乱

兼重が生きた時代は、鎌倉幕府が衰退し、後醍醐天皇による討幕運動が活発化していた時期でした。元弘3年（1333年）に鎌倉幕府が滅亡し、建武の新政が始まりましたが、足利尊氏の反乱によって新政は崩壊し、南北朝の争乱へと突入しました。このような混乱の中、兼重は建武2年（1335年）末から南朝方として日向高城を拠点に各地を転戦しました。野辺盛忠や伊集院忠国らと共に、九州における南朝勢力の拡大に大きく貢献しました。さらに、八代の伊東祐広や肥後の菊池武敏、阿蘇氏らと連携し、国富庄に進出し、その勢力を誇りました。しかし、当初南朝方であった島津氏が後に足利尊氏に味方したため、肝付氏と島津氏は対立関係となりました。

激戦と落城

尊氏は、延元元年（1336年）に畠山直顕を日向・大隈方面に派遣し、肝付氏に対抗させました。さらに、豊後の佐伯氏、大隈の禰寝氏、日向土持氏らに協力を求め、島津貞久を帰国させて肝付氏を攻めさせました。島津氏は、兼重方の姫木城や三俣院山之口の王子城を攻め落とし、その後、肝付兼隆が拠る加瀬田城も陥落させました。畠山直顕は兼重が守る高城（月山日和城）に迫りましたが、兼重は巧みな防戦で直顕勢を撃退しました。一時は南朝方が優勢となりましたが、延元4年（1339年）には高城が直顕勢によって落城し、兼重は大高山の本城に撤退しました。これにより、日向における肝付氏の勢力は一時的に衰退しました。

晩年と死

その後、兼重は勢力回復を試み、鹿児島攻略を計画しましたが、実現には至りませんでした。大隈地方を転戦しましたが、戦況を覆すことはできず、正平4年/貞和5年（1349年）に北朝側の石井中務丞重信を攻めた際に病死しました。彼の死は、南九州の南朝方にとって大きな損失となりました。家督は子の秋兼が継承しました。

その後

兼重の死後、尊氏と直義の兄弟対立によって状況は急変し、島津氏や畠山氏らが目まぐるしく立場を変える中、肝付氏では兼重の後を継いだ秋兼が蒲生氏らとともに畠山氏に属しました。南北朝の争乱は次第に北朝方が優勢となり、秋兼の子兼氏は畠山氏と結んで自家の安泰を図り、さらに新納実久と結んで島津氏とも関係を築きました。兼氏の跡を継いだ兼元は島津氏の麾下に属し、応永17年（1410年）には島津元久に従って上洛し、将軍足利義持に謁見しました。

顕彰

明治45年（1912年）、その功績から従四位を追贈されました。また、昭和10年（1935年）には、地元の協力により、居城であった月山日和城址に肝付兼重公誠忠碑が建立され、その忠義と武勇が後世に伝えられています。

まとめ

肝付兼重は、動乱の南北朝時代において、南朝方として勇猛果敢に戦った武将であり、その生涯は激動の時代を生き抜いた人々の姿を今に伝えています。

もう一度検索