胡沙

胡沙（クシャ）：金朝を揺るがした官僚の生涯

胡沙（こさ、女真音：クシャ、? - 1213年）は、金朝の宗室である女真完顔部出身の官僚で、漢名は承裕と名乗りました。彼の生涯は、金朝が南宋やモンゴル帝国との間で繰り広げた激しい戦乱の時代と深く関わっています。

出世と南宋との戦い

女真貴族として生まれた胡沙は、順調に官界を歩み、刑部員外郎や恵州刺史といった中央と地方の要職を歴任しました。泰和5年（1205年）に南宋との戦いが始まると、胡沙は陝西路統軍副使から通遠軍節度使・陝西兵馬都統副使に任命され、陝西地方の防衛を担うことになります。彼は騎兵1千を率いて宋軍を追撃し、4千もの首級を挙げるなど、数々の戦功を立てました。

泰和7年（1207年）には前線を離れ、臨潢府知府に転任。大安元年（1209年）には中央に召還され、御史中丞に任ぜられました。しかし、平和な日々は長くは続きませんでした。

モンゴル帝国の侵攻と失態

大安3年（1211年）、チンギス・カンの率いるモンゴル帝国軍が侵攻を開始すると、胡沙は参知政事に任命され、防衛の最前線の指揮を委ねられます。しかし、同年8月の野狐嶺の戦いにおいて、彼は戦意を喪失し、積極的に戦うことなく退却してしまいます。さらに、朝廷が地元兵と共にモンゴル軍に立ち向かうよう要請したにもかかわらず、胡沙はこれを拒否して軍を南下させました。その結果、会河堡でモンゴル軍に追撃され、大敗を喫してしまいます。

胡沙自身は単身で逃れることに成功しましたが、この敗戦により、モンゴル軍は長城の要衝である居庸関を占拠し、金の首都である中都（大興府）を脅かす存在となりました。

会河堡の戦いは、金朝滅亡の大きな原因となる大敗北でしたが、当時の皇帝であった衛紹王の優柔不断さにより、胡沙は敗戦の罪を免れました。崇慶元年（1212年）には陝西安撫使として軍務に復帰しています。

最期

貞祐元年（1213年）、胡沙は元帥右監軍となり、モンゴルに呼応して反乱を起こした契丹人と戦いますが、連戦連敗を喫し、同年、病に倒れて陣没しました。

胡沙の生涯は、金朝が滅亡へと向かう激動の時代を象徴しています。彼は南宋との戦いで功績を挙げた一方で、モンゴル帝国の侵攻に対しては失態を重ね、最終的には金朝滅亡の一因となってしまいました。彼の功績と過ちは、歴史の中で深く刻まれています。

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