胡蝶 (舞楽)

雅楽の舞「胡蝶」について

「胡蝶（こちょう）」は、雅楽の演目の一つで、舞楽に分類されます。具体的には「胡蝶楽（こちょうらく）」とも呼ばれ、春の日に蝶が舞い遊ぶ様子を表現した四人舞です。その名の通り、蝶をモチーフにした優美な舞が特徴です。

概要

「胡蝶」は、高麗楽（こまがく）という音楽様式に分類されますが、そのルーツは渤海や朝鮮半島ではなく、日本で独自に作られた楽曲です。迦陵頻（かりょうびん）という別の舞楽と対になる番舞として創作されたため、その形式や装束は迦陵頻をベースとしています。

曲の調子は、高麗壱越調（こまのいちこつちょう）という、唐楽の平調（ひょうちょう）に相当するものです。作曲は藤原忠房（ふじわらのただふさ）、振り付けは敦実親王（あつみしんのう）が担当しました。

「胡蝶」は、基本的に4人の少年によって舞われる童舞（どうぶ）として知られています。ただし、神社などでは巫女や少女が舞う場合もあります。

装束と化粧

舞人は、平絹（へいけん）の白い袴の上に、緑系統の地色に蝶を散らした尻長の紗（しゃ）の指貫（さしぬき、別名：奴袴）を着用します。手には山吹の枝（持ち花）を持ちます。足には絲鞋（しがい）を履き、背中と胸には、牛革または重ね貼りした和紙に胡粉（ごふん）を引いて紅や緑青で蝶の翅（はね）を描いた胸当てを付けます。

頭には、鍍金（めっき）された唐草模様の前天冠（まえてんがん）をつけます。これは山形の額飾りと側頭部に二本の剣形の飾りを備えた金属製のヘッドバンドです。前天冠には、左右一対の山吹の小枝である挿頭華（かざし）を挿します。髪型は、図画資料によると下の輪のみの角髪（みずら）に結うことが多いようです。

化粧は、稚児（ちご）と同様の白塗りの厚化粧が原則とされていますが、状況によっては薄化粧や化粧をしない場合もあります。

その他

『源氏物語』の第54帖「胡蝶」には、この装束を着けた童子が、宴会の際に舟を漕がせる様子が描かれており、当時の貴族社会での「胡蝶」の使われ方が伺えます。

関連情報

雅楽: 日本古来の音楽と舞踊の総称。
舞楽: 雅楽のうち、舞を伴うもの。
高麗楽: 雅楽の一種で、主に朝鮮半島の影響を受けた音楽。
童舞: 少年が舞う舞楽。
迦陵頻: 雅楽の演目の一つで、胡蝶と対になる番舞。

外部リンク

舞楽・胡蝶 - 日本服飾史 - 風俗博物館
胡蝶 - 雅楽 GAGAKU - 文化デジタルライブラリー - 独立行政法人日本芸術文化振興会
舞楽胡蝶 - お祭り、大好き! - 株式会社井筒
* 2010Network公式チャンネル - 熱田神宮舞楽神事日本語[Network2010] - YouTube (7m5s〜)


これらの資料を通して、雅楽「胡蝶」についての理解を深めることができるでしょう。特にYouTubeの映像では、実際に舞う様子を視覚的に捉えることができます。

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