能郷白山

能郷白山：両白山地の最高峰、白山信仰と豊かな自然

岐阜県本巣市、揖斐郡揖斐川町、そして福井県大野市にまたがる能郷白山は、標高1617mを誇る両白山地の最高峰です。岐阜県と福井県の県境に位置し、その雄大な姿は濃尾平野からも望むことができます。特に、豪雪地帯に位置することから、春遅くまで雪をまとったその姿は、人々の目を楽しませています。

深田久弥と日本二百名山

深田久弥が日本百名山を選定する際、荒島岳と能郷白山のどちらかを選ぶ必要がありました。最終的に荒島岳が選ばれましたが、能郷白山は深田クラブにより日本二百名山に選定されています。また、岐阜県では「ぎふ百山」の一つにも選ばれており、その高い知名度と人気がうかがえます。別名として白山、能郷山、権現山という呼び名も存在します。

豊かな自然と希少な動植物

能郷白山の岐阜県側の山域（656.45ha）は、亜高山性植物とブナの原生林の豊かな自然環境から、「能郷白山自然環境保全地域」に指定されています。山体は花崗閃緑岩を主とした地質で構成され、多様な植物が生育しています。

山頂には一等三角点があり、熊笹が生い茂る広大な草原が広がっています。ニッコウキスゲをはじめ、夏には多くの高山植物が咲き誇り、彩り豊かな景観を作り出します。周辺では、イワウチワ、オオバキスミレ、カタクリなど、春から秋にかけて様々な花々を見ることができます。また、希少な植物ノウゴウイチゴは、この山で最初に発見されたことで知られています。

かつては山全体がブナやミズナラなどの原生林に覆われていましたが、戦後の木材需要の高まりにより、能郷谷一帯で広範囲にわたる伐採が行われました。現在では、自然林の復元が進められています。

この地域の固有種であるカンムリレンズガイは、岐阜県のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されており、貴重な生態系の保全が課題となっています。

白山信仰の聖地

能郷白山は、白山信仰と深い関わりを持つ山でもあります。加賀白山を開いた泰澄上人が、加賀白山の山頂から能郷白山を望み、白山権現の分祀を思い立ったと伝えられています。山頂にはかつて能郷白山神社奥宮がありましたが、2018年の台風で倒壊し、現在は里宮に御神体が遷されています。2022年には奥宮跡地に新しい祠が建てられました。

能郷谷の麓には、能楽堂を備えた白山神社（白山権現里宮）があり、毎年4月13日の例祭では、能郷の伝統芸能である能と狂言が奉納されています。この伝統行事を通して、能郷白山の歴史と文化が受け継がれています。

歴史と登山

718年（養老2年）には泰澄上人による開基が伝えられています。1897年（明治30年）には現在の能郷白山神社の社殿が再建されました。しかし、1965年（昭和40年）の集中豪雨では、麓の能郷谷が土砂で埋まるなど、自然災害にも見舞われています。

登山道は、温見峠ルートと能郷谷ルートの2つがあります。温見峠ルートは国道157号からアクセスでき、比較的短時間で山頂に到達できます。一方、能郷谷ルートは健脚向けのコースとなっています。山頂からは、伊吹[[山]]、白山、恵那山、北アルプスなどの山々、そして濃尾平野や伊勢湾を一望できる素晴らしい展望が得られます。

周辺環境

能郷白山の周辺には、標高1541mの磯倉山など、美しい山々が連なり、徳山湖といった景勝地も存在します。山頂から南西方向には白谷という河川があり、徳山ダムが建設されています。また、山頂の北東には温見峠があり、国道157号が通っています。この峠は太平洋と日本海の分水嶺となっている重要な場所です。

能郷白山へのアクセスは、温見峠付近の登山口まで公共交通機関がないため、マイカーまたはタクシーでのアクセスとなります。国道157号は一部区間で狭隘なため、注意が必要です。

参考文献

岐阜県山岳連盟『ぎふ百山』岐阜新聞社
徳久球雄 編『コンサイス日本山名辞典』三省堂
島田靖、堀井啓介『改訂版　岐阜県の山』山と溪谷社
日本山岳会 編『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版
* その他多数


能郷白山は、豊かな自然、歴史、文化が一体となった貴重な山です。登山やハイキングを通して、その魅力を体感してみてはいかがでしょうか。

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