腹五社神社
腹五社神社(はらごしゃじんじゃ)は、
鹿児島県鹿児島市黒神町に鎮座する神社です。古くは五社大明神とも呼ばれ、地域の人々に崇敬されてきました。旧
社格は村社で、「原五社神社」とも表記されます。
歴史
神社の創建は古く、
寛永2年(
1625年)には島津家久の命により、現在の場所から黒神村の浜辺へと移されました。その後、
寛政10年(
1698年)に再び現在地へと遷宮されています。
安永8年(
1779年)の安永大
噴火の際には、黒神から現在の
鹿児島市吉野町へ移住した人々が、故郷の腹五社神社を勧請し、吉野村に原五社神社を創建したと伝えられています。
そして、
1914年(大正3年)に発生した
桜島の大正大
噴火は、神社に甚大な被害をもたらしました。噴石により社殿は埋没しましたが、幸いにも御
神体は一部が焼失したものの、無事であったものは現在も祀られています。
腹五社神社の境内には、大正大
噴火によって埋没した
鳥居が残されており、「黒神埋没
鳥居(くろかみまいぼつとりい)」と呼ばれています。この
鳥居は、
鹿児島県の
天然記念物(地質鉱物)に指定されており、
桜島・錦江湾ジオパークのジオサイトの一つにもなっています。
大正大
噴火は、
20世紀以降日本で発生した火山
噴火の中で、最大規模の噴出量を記録しました。この
噴火によって、黒神集落では多くの家屋が倒壊・埋没し、神社も甚大な被害を受けました。
鳥居は、全長3
メートルの斜長
流紋岩の岩柱で、
噴火による堆積物によって約2
メートルが埋没しています。
噴火後、地域住民が
鳥居を掘り起こそうとしましたが、当時の
東桜島村長であった野添八百蔵が「災害の記憶として後世に残すべき」と判断し、そのままの状態で保存されました。この現地保存は、被災遺構の保存事例として最古級のものとされています。
1958年(昭和33年)には、同じく
黒神町に現存する埋没門柱と共に、「
噴火により埋没した
鳥居,門柱」として
鹿児島県の
天然記念物に指定されました。この埋没
鳥居は、
噴火の脅威を後世に伝える貴重な遺構として、多くの人々が訪れています。
桜島港(
桜島フェリーターミナル)から車で約30分。
参考文献
鹿児島県『
桜島大正
噴火誌』
鹿児島県、1927年。
桜島町郷土誌編さん委員会『
桜島町郷土誌』
桜島町、1988年。
南日本新聞『
鹿児島市史Ⅳ』 4巻、
鹿児島市、1990年。
芳即正、
五味克夫『
日本歴史地名大系47巻
鹿児島県の地名』
平凡社、1998年。
中央防災会議災害教訓の継承に関する専門調査会、2012、「第2章 大正
噴火の経過と災害」
南日本新聞『
鹿児島市史Ⅴ』 5巻、
鹿児島市、2015年。
朽津信明、森井順之「〔報文〕保存科学から見た被災遺構の保存・活用の歴史」『保存科学』第56巻、2017年。
関連項目
鹿児島県指定文化財一覧
鹿児島県の観光地
鹿児島市立黒神中学校(敷地が隣接している)
*
桜島爆発記念碑(大正大
噴火に関連する災害記念碑)