東桜島村

東桜島村：桜島と共に生きた村の歴史

東桜島村（ひがしさくらじまむら）は、かつて鹿児島県の桜島東部に存在した村です。1889年（明治22年）の町村制施行時に北大隅郡に属し、その後鹿児島郡に編入されました。

地理と特徴

東桜島村は、活火山である桜島の東半分をその行政区域としていました。村内には、桜島の中岳、南岳、権現山、鍋山といった山々がそびえ立ち、自然豊かな場所でした。かつては大隅半島との間には瀬戸海峡が存在しましたが、1914年（大正3年）の大正大噴火により、溶岩流によって埋没し陸続きとなりました。

大字

村には、高免、黒神、瀬戸、脇、有村、古里、湯之、野尻の8つの大字が存在しました。これらの大字は、現在の鹿児島市の高免町、黒神町、有[[村町]]、古里町、東桜島町、持木町、野尻町にあたります。

歴史

町村制施行から大正大噴火まで

1889年（明治22年）4月1日、町村制の施行に伴い、湯之村、野尻村、古里村、有村、黒神村、高免村、瀬戸村、脇村の区域が合併し、北大隅郡東桜島村が誕生しました。村役場は大字有村に置かれました。1897年（明治30年）には、郡の統合により鹿児島郡に属することとなりました。

大正大噴火による壊滅的被害

1914年（大正3年）1月12日、桜島は大噴火を起こし、噴煙は高さ約1万メートルに達しました。当時の東桜島村の人口は約8千人。村役場や郵便局、学校などが有村に集中していました。噴火の前兆はあったものの、測候所の回答により避難は行われず、噴火発生後、住民は火山灰や軽石が降り注ぐ中を避難することになりました。

村長らは役場から脱出しようとしましたが、緊急脱出用の舟を失い、公金を帆柱にして泳いで避難を試みましたが、途中で溺死者も出ました。最終的には漁船によって救助されました。巡査や郵便局長、学校長は最後まで島に残り、救護活動にあたりました。

1月13日には、火砕流によって瀬戸海峡が埋められ、1月30日には大隅半島と陸続きになりました。有村、脇、瀬戸の3集落は溶岩に埋没し、壊滅的な被害を受けました。犠牲者は行方不明者を含めて25名に及びました。

村役場が焼失したため、身分登記簿などの書類も失われました。その後、村役場は湯之集落に移転し、復興に向けて動き出しました。国からの補助金や無利息貸付を受け、耕地復旧工事や移住が行われました。

1924年（大正13年）には、大正大噴火の教訓を後世に伝えるため、「桜島爆発記念碑」（通称：科学不信の碑）が建立されました。

昭和噴火によるさらなる被害

1935年（昭和10年）から小噴火を繰り返していた桜島は、1946年（昭和21年）3月10日に再び噴火しました。溶岩流は黒神集落を埋め尽くし、海岸まで到達しました。また、分流した溶岩は有村海岸にも到達し、有村集落も大きな被害を受けました。この噴火により、桜島全域が数ヶ月にわたって停電しました。

鹿児島市への編入

1950年（昭和25年）10月1日、東桜島村は伊敷[[村]]と共に鹿児島市に編入され、自治体としての歴史を閉じました。旧東桜島村の大字は、鹿児島市の町丁へと名称が変更されました。

教育

1950年（昭和25年）時点での村内の学校は以下の通りでした。

中学校：東桜島村立東桜島中学校、黒神分校（後に鹿児島市立黒神中学校として独立）
小学校：東桜島村立黒神小学校、東桜島村立東桜島小学校、東桜島村立改新小学校、東桜島村立高免小学校

出身の著名人

東洋史・仏教史学者の藤善真澄が、この東桜島村の出身です。

年表

1889年（明治22年）4月1日：町村制施行により東桜島村が成立
1896年（明治29年）4月1日：鹿児島郡に編入
1914年（大正3年）1月12日：大正大噴火発生、有村、脇、瀬戸の3集落が埋没
1914年（大正3年）1月30日：瀬戸海峡が埋まり大隅半島と陸続きに
1914年（大正3年）2月：東桜島村役場が湯之に移転
1946年（昭和21年）3月10日：昭和噴火発生、黒神、有村の2集落が埋没
* 1950年（昭和25年）10月1日：鹿児島市に編入合併

まとめ

東桜島村は、桜島の火山活動によって大きな被害を受けながらも、住民は復興に向けて懸命に努力を続けました。その歴史は、自然災害の脅威と、それに向き合う人々の強さを物語っています。現在、東桜島村の名前は地図上からは消えましたが、その教訓は後世に語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索