臼杵磨崖仏

臼杵磨崖仏（うすきまがいぶつ）

大分県臼杵市に位置する臼杵磨崖仏は、一般に「臼杵石仏」として知られる、日本を代表する磨崖仏です。この石仏群は、国の特別史跡に指定されており、1995年には磨崖仏として日本初、彫刻としては九州初の国宝に指定されました。臼杵磨崖仏は全4群61躯から構成され、そのうち59躯が国宝に指定されています。

歴史

磨崖仏の造営時期や背景を記す史料は残されていません。地元には、亡くなった娘の菩提を弔うために長者が彫らせたという「真名野長者伝説」が伝わっています。この伝説には用明天皇が登場することから、6世紀後半が舞台と考えられますが、実際の磨崖仏の様式からは、大部分が平安時代後期、一部が鎌倉時代の作と推定されています。

山岳仏教の衰退とともに、磨崖仏は忘れ去られ、長い間風雨に晒され続けました。阿蘇山の火砕流が固まった凝灰岩に彫られた石仏は脆く、参拝路が雨水で削られ、多くの石仏の下半身が失われました。仏頭の多くも剥落し、特に古園石仏群の大日[[如来]]像の仏頭は、1993年の修復まで台座に置かれたままでした。

仏頭の修復は、元の姿に戻すべきという意見と、像の姿を変えるべきではないという意見の間で激しい論争を呼びました。しかし、国宝指定の条件として仏頭の復元が求められたため、最終的に元の位置に戻されました。臼杵駅のホームにあるレプリカは、修復前の状態を表しており、駅前には当初の姿を再現したレプリカが設置されています。仏頭が体と再び繋がったことから、「首がつながる」「解雇されない」という俗説も生まれました。

保存修復工事では、周辺の地形も整備され、石仏の下に水流ができることはなくなりました。しかし、岩陰の湿潤な環境では苔が繁殖しており、その対策が講じられています。

年表

1913年（大正2年）：京都帝国大学教授小川琢治が臼杵磨崖仏を調査。
1952年（昭和27年）3月29日：国の特別史跡に指定。
1959年（昭和34年）4月1日：観覧料の徴収開始。
1962年（昭和37年）6月21日：国の重要文化財に指定。
1963年（昭和38年）3月28日：保存工事落成式挙行。
1964年（昭和39年）1月6日：臼杵駅ホームに古園石仏群大日[[如来]]像の頭部模型を設置。
1993年（平成5年）8月25日：古園石仏群大日[[如来]]の仏頭が元の位置に復元。
1994年（平成6年）3月25日：保存修復工事及び覆屋工事の落成式挙行。
1995年（平成7年）6月15日：国宝に指定。
2017年（平成29年）9月15日：金剛力士立像2躯が国宝に追加指定。

磨崖仏の概要

磨崖仏は、古園石仏群、山王山石仏群、ホキ石仏第一群、ホキ石仏第二群の4か所に分かれています。いずれも溶結凝灰岩の岩壁に高肉彫で彫られ、彩色が施されています。造立年代を示す史料はありませんが、作風から大部分が平安時代後期、ホキ石仏第一群の一部が鎌倉時代に造られたと推定されています。

古園石仏群

全13躯で、金剛界大日[[如来]]坐像を中心に、如来像、菩薩像、明王像、天部像が配置されています。尊像構成は、金剛界曼荼羅を表しているという説もあります。

山王山石仏群

全3躯で、丈六の如来坐像を中心に、左右に小ぶりの如来坐像が配置されています。

ホキ石仏第一群

4つの龕に分かれ、如来坐像、菩薩立像、地蔵菩薩像、十王像などが配置されています。第三・四龕は鎌倉時代の追刻とみられています。また、愛染明王坐像もあります。

ホキ石仏第二群

2つの龕からなり、阿弥陀如来坐像を中心に、脇侍菩薩立像や九体阿弥陀如来像が配置されています。

文化財

1995年に「臼杵磨崖仏」として彫刻部門の国宝に指定されました。当初は59躯が指定され、2017年には金剛力士像2躯が追加指定されました。

国宝指定名称は以下の通りです。

臼杵磨崖仏
大日[[如来]]及諸尊像（古園石仏） 13躯
金剛力士立像（古園石仏龕外左側） 2躯
如来及両脇侍如来坐像（山王山石仏） 3躯
如来三尊及両脇侍像（ホキ石仏第一群第一龕） 5躯
如来三尊坐像（ホキ石仏第一群第二龕） 3躯
阿弥陀如来及両脇侍像（ホキ石仏第二群第一龕） 3躯
附
愛染明王坐像 1躯
大日[[如来]]及諸尊像（同第三龕） 5躯
地蔵菩薩及十王像（同第四龕） 11躯
不動明王・毘沙門天像（ホキ石仏第二群第一龕左側） 2躯
菩薩形立像（ホキ石仏第二群第一龕右側） 2躯
阿弥陀如来及び諸尊像（同第二龕） 11躯

門前磨崖仏

国宝には指定されていませんが、国の特別史跡には含まれています。多聞天像、如来三尊像、不動明王立像、コンガラ童子像、セイタカ童子像などがあります。

国宝指定以外の石仏群

国宝指定の4群以外にも、臼杵市内に3群の磨崖仏があります。

年中行事

特別祈願法要：1月下旬
石仏火祭り：8月最終土曜日（西日本最大の火祭り）
年越し供養法要：12月31日

周辺

満月寺：石仏を彫ったとされる蓮城法師が創建した寺。
連城法師坐像
真名野長者夫妻石像
仁王像
宝篋印塔（日吉塔）・石造五重塔
大鳥居
五輪塔：計3基あり、特に2基は日本最古級。
深田はす畑：7月中旬から8月上旬に見頃を迎え、蓮まつりが開催。
深田の鳥居

アクセス

鉄道・バス：JR上[[臼杵駅]]、臼杵駅、大分駅からバス。
飛行機・空港バス：大分空港から佐臼ライナーで臼杵インター下車。
自動車：東九州自動車道臼杵インターチェンジから。
自転車：臼杵駅観光案内所でレンタサイクル利用可能。

脚注

注釈

出典

参考文献

『週刊朝日百科 日本の国宝』21号、朝日新聞社、1997
「新指定の文化財」『月刊文化財』382号、第一法規、1995

関連項目

九州・沖縄地方の史跡一覧
臼杵煎餅

外部リンク

国宝 臼杵石仏 公式ホームページ
臼杵磨崖仏 - 文化遺産オンライン（文化庁）
臼杵磨崖仏 - 国指定文化財等データベース（文化庁）
国宝臼杵石仏と石の造形美 - 臼杵市観光情報協会

もう一度検索