興南区域

興南区域（フンナムくいき）

興南区域は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の咸鏡南道咸興市に属する区域です。咸興湾に面した港湾都市であり、化学工業が盛んな地域として知られています。

地理

興南区域は、咸興市の南東約12kmに位置し、咸興湾に面しています。この地理的条件が、港湾都市としての発展を支えてきました。

行政区画

現在の興南区域は、43の洞、1つの労働者区、そして5つの里を管轄しています。これらの行政区画は、歴史的な変遷を経て現在の形となっています。

歴史

興南区域の歴史は、日本統治時代の1920年代に遡ります。当時、蓋馬高原で水力発電所が建設され、その豊富な電力供給を背景に、興南には大規模な工業地帯が建設されました。特に、日窒コンツェルン（朝鮮窒素肥料など）が中心となり、硫安などの化学工業が発展しました。1944年には興南府となり、都市としての地位を確立しました。

1945年の日本の敗戦後、多くの日本人が興南から日本へ引き揚げました。朝鮮戦争（1950年～1953年）の際には、一時的に韓国軍・国連軍が興南を占領しましたが、中国人民志願軍の参戦により、国連軍は撤退を余儀なくされました。この際、アメリカ軍を中心とする国連軍約10万人と、一般市民約10万人が、興南の港からアメリカ海軍の艦船によって海路南方へ脱出する「興南撤収作戦」が実行されました。興南は国連軍の艦砲射撃と空爆によって大きな被害を受けましたが、戦後、ソ連や東ドイツなどの東側諸国の支援を受けて復興し、発展を遂げました。

年表

1930年10月 - 咸興郡雲田面の一部が分立し、興南邑が発足。
1939年 - 咸州郡西湖面・雲南面の各一部が興南邑に編入。
1941年4月1日 - 咸州郡雲南面・三平面の各一部が興南邑に編入。
1943年 - 咸州郡西湖面の一部が興南邑に編入。
1944年12月 - 咸州郡興南邑および雲南面の一部が合併し、興南府が発足。
1945年 - 興南府が興南市に改称。
1949年 - 咸州郡雲南面の一部を編入。
1952年12月 - 郡面里統廃合により、咸鏡南道興南市の一部、咸州郡雲南面の一部地域をもって、興南市を設置。(43里)
1954年10月 - 徳豊里・豊東里が咸州郡に編入。(41里)
1955年 - 雲城里など複数の里が洞に昇格。(39洞2里)
1956年 - 龍城洞など複数の洞が合併し、龍新里が発足。(29洞5里)
1957年 - 東興洞など複数の洞が合併し、内湖洞が発足。(22洞5里)
1960年10月 - 興南市廃止。
1960年10月 - 咸鏡南道興南市の一部、退潮郡の一部をもって、咸興直轄市興南区域を設置。(12洞2里)
1963年 - 柳亭一洞・柳亭二洞の各一部が合併し、松上洞が発足。(13洞2里)
1965年 - 鷹峯洞が分割され、鷹峯一洞・鷹峯二洞が発足。(14洞2里)
1967年 - 西湖洞が分割され、西湖一洞・西湖二洞が発足。(16洞2里)
1970年7月 - 咸興直轄市の降格に伴い、咸鏡南道咸興市興南区域となる。(16洞2里)
1977年 - 陵東里がセマウル里に改称。(16洞2里)
2001年8月 - 興南区域廃止。
2001年8月 - 咸鏡南道咸興市の一部、咸州郡の一部をもって、咸興直轄市龍城区域を設置。(5洞3里)
1963年 - 龍城洞が分割され、龍城一洞・龍城二洞が発足。(7洞3里)
1965年 - 九龍洞が分割され、九龍一洞・九龍二洞が発足。(10洞3里)
1970年7月 - 咸興直轄市の降格に伴い、咸鏡南道咸興市龍城区域となる。(10洞)
1970年10月 - 咸州郡洙搗里・豊東里・徳豊里を編入。(10洞3里)
1977年 - 九龍一洞が金ビッ洞に改称。(10洞3里)
1990年 - 龍城区域が海岸区域に改称。(10洞3里)
1993年 - 徳豊里が徳豊洞に昇格。(11洞2里)
2001年8月 - 海岸区域廃止。
1960年10月 - 咸鏡南道興南市の一部をもって、咸興直轄市本宮区域を設置。(6洞2里)
1963年 - 本宮二洞が分割され、興西洞・興北洞が発足。(10洞2里)
1965年 - 龍新里が龍新洞に昇格。(10洞1里)
1967年 - 本宮一洞の一部が分立し、本宮三洞が発足。(12洞1里)
1970年 - 咸興直轄市の降格に伴い、咸鏡南道咸興市本宮区域となる。(12洞1里)
1974年 - 本宮区域廃止。
1995年 - 咸鏡南道咸興市の一部をもって、咸興市興徳区域を設置。(12洞1里)
1996年 - 咸興市の一部を編入。(13洞1里)
2001年8月 - 興徳区域廃止。
2001年8月 - 咸鏡南道咸興市興南区域湖南洞・天機洞・鷹峯一洞・鷹峯二洞・徳洞・荷徳洞・内湖洞・柳亭一洞・柳亭二洞・柳亭三洞・松上洞・厚農洞・鵲島洞・豊興洞・西湖一洞・西湖二洞・麻田里・セマウル里、海岸区域雲城一洞・雲城二洞・龍城一洞・龍城二洞・雲中一洞・雲中二洞・金ビッ洞・銀ビッ洞・松興洞・龍岩洞・洙搗里・徳豊洞・豊東里、興徳区域恩徳洞・フィンシル洞・興徳一洞・興徳二洞・興徳三洞・興徳四洞・興西洞・興北洞・蓮モッ洞・センムル洞・龍新洞・龍淵洞・昌興里・洙辺洞、沙浦区域湖田洞・上水洞・ソナム洞・草雲労働者区をもって、興南市を設置。(43洞1労働者区5里)
2005年10月 - 咸鏡南道興南市が再び咸興市に編入され、咸興市興南区域となる。(43洞1労働者区5里)

産業

興南区域の産業は、日本統治時代に形成された電力、港湾、工場などの基盤の上に成り立っています。特に、合成繊維（ビナロン）や化学繊維などの化学工業、機械工業などの重工業が中心です。苛性ソーダや肥料の生産も盛んです。

交通

興南区域には、以下の鉄道駅があります。

平羅線：昌興駅 - 興南駅 - 西湖駅 - 麻田駅
西湖線：沙浦駅 - 上水駅 - 城川駅 - 雲中駅 - 龍城駅 - 荷徳駅 - 西湖駅
ビナロン線：ビナロン駅 - 興徳駅 - 興南駅
昌興線：昌興駅 - 蓮興駅

脚注

関連項目

水豊ダム
文在寅 - 両親と姉が興南出身。父親は朝鮮戦争前に興南市庁に勤務。

外部リンク

* 以北五道委員会

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