船舶地球局

船舶地球局とは

船舶地球局は、電波法で定義される無線局の一種であり、人工衛星を中継して無線通信を行う船舶に開設される無線局です。具体的には、インマルサットなどの人工衛星局を介して、陸上の海岸地球局や他の船舶地球局と通信を行います。これは、海上における通信を円滑にするための重要なシステムであり、船舶の安全な航行や業務連絡に欠かせないものです。

定義と概要

電波法第6条第1項第4号ロにおいて、「船舶に開設する無線局であつて、人工衛星局の中継により無線通信を行うもの」と定義されています。また、電波法施行規則第4条第1項第20号の6では、「法第6条第1項第4号に規定する船舶地球局」と定められています。

さらに、電波法施行規則第3条第2項第1号では、海上移動衛星業務を「船舶地球局と海岸地球局との間又は船舶地球局相互間の衛星通信の業務」と定義しています。これにより、船舶地球局が海上通信ネットワークの中核をなす存在であることがわかります。

船舶地球局は、地球局の一種であり、海上移動業務における船舶局に相当するものです。通信相手となる海岸地球局は、地上の通信網との接続設備を備えており、海運会社や海上保安庁などとの直接的な連絡を可能にします。

免許

船舶地球局の開設には、無線局免許が必要です。電波法第5条第1項では、原則として外国籍の者が無線局の免許人になることはできませんが、船舶地球局については例外が認められています。具体的には、船舶安全法に規定される船舶に開設される場合や、電気通信業務を行うことを目的とする無線局については、外国籍の者でも免許を取得できます。種別コードはTGで、免許の有効期間は原則として5年ですが、最初の免許に限り4年を超え5年以内の1月31日までとなります。

用途

船舶地球局の主な用途は、電気通信業務です。従来は、用途が電気通信業務に限定されていましたが、法改正により、より幅広い目的で使用されるようになりました。

電波の型式と周波数

船舶地球局は、インマルサット人工衛星局を中継して海岸地球局と通信を行います。使用する電波の型式と周波数は、電波法施行規則第12条第6項および関連告示によって定められています。

無線局免許状の備付け

電波法施行規則第38条第1項により、無線局免許状は無線局に備え付ける必要があり、同条第2項により、主たる送信装置のある場所の見やすい箇所に掲示しなければなりません。ただし、掲示が困難な場合は、その限りではありません。

旧技術基準の機器の使用

無線設備の技術基準が改正されたことにより、旧技術基準に基づく無線設備の使用期限が定められていましたが、コロナ禍の影響により、使用期限は当分の間延期されています。詳細については、無線局に関する情報を参照する必要があります。

運用

船舶地球局の運用は、無線局運用規則第3章に基づき、海上移動業務、海上移動衛星業務、海上無線航行業務の無線局の運用に関する規定に従う必要があります。電波法第65条や無線局運用規則第42条第2号、第43条の2第2項に基づき、船舶地球局は常に定められた周波数を聴守する必要があります。

操作

遭難通信、緊急通信、安全通信などの重要な通信操作は、無線従事者でなければ行うことができません。原則として第一級海上特殊無線技士以上の資格を持つ者が管理する必要があります。ただし、一定の条件を満たす場合や、簡易な操作については、無線従事者の資格がなくても操作が可能です。また、外国にある船舶地球局で無線従事者を得られない場合には、一定の条件のもとで、外国政府が発行した証明書を有する者が無線設備の操作を行うことができます。

検査

船舶地球局の検査には、落成検査、定期検査、変更検査があります。旅客船や一部の船舶地球局を除き、登録検査等事業者による点検が可能で、その結果に基づいて検査の一部を省略できます。定期検査の周期は、船舶の種類や設備によって異なり、1年から3年の間隔で実施されます。

沿革

船舶地球局は、1989年の電波法改正で定義され、1993年に電波利用料制度が導入されました。その後、外国籍の者でも船舶地球局を開設できるようになったり、技術基準の改正が行われたりしています。2017年には、電波法での定義が現行のものになり、用途が電気通信業務に限定されなくなりました。2022年には、さらに外国籍の者が船舶地球局を開設できる範囲が拡大されました。

参考文献

電波法
電波法施行規則
無線局運用規則
総務省電波利用ホームページ

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