色目人

色目人（しきもくじん）とは

色目人とは、元朝時代に中国を支配したモンゴル人が、その支配体制下において用いた人間集団の分類の一つです。主に中央アジアや西アジア出身の人々を指し、「諸色目人」を略した言葉で、様々な種類の人々という意味合いがあります。

色目人の定義と構成

色目人に含まれるのは、ウイグル人、チベット系タングート、テュルク系・イラン系のイスラム教徒などです。彼らは、モンゴル帝国に早くから帰順したため、漢民族よりも高い地位を与えられました。ヨーロッパから来たキリスト教徒も色目人に分類されますが、その数は少数でした。

元朝における色目人の役割

色目人は、モンゴル人を頂点とする支配階級の一角を担い、政治・経済・文化の各分野で活躍しました。彼らは、仏教やイスラム教に基づいた高度な知識や文化を持ち込み、元の支配体制を支えました。また、商業においては、オルトクと呼ばれる共同事業制度を通じて国際的な व्यापारに参画し、莫大な利益を得ました。能力を重視したモンゴル人によって財務官僚に登用される者も多くいました。

色目人と社会

色目人は、中国社会においては異質な存在として認識され、漢民族との軋轢も生じました。彼らは、出身地の慣習を экономической政策に取り入れたため、民衆からは搾取者として嫌われることもありました。また、モンゴル貴族の権益を侵害したとして、排除されることもありました。

色目人の身分

従来の通説では、元朝は人々をモンゴル人、色目人、漢人、南人の四つの階級に分け、ピラミッド型の階層構造を形成したとされてきました。しかし、色目人は多様な出自を持つ集団であり、統一された身分を形成していたかは疑問視されています。色目人の中には、軍人としてモンゴルに準じて活躍した人々も存在しました。

元朝後期の色目人

元朝後期になると、色目人の中にも中国文化に親しむ者が現れ、科挙を受験する者もいました。現代中国の回族の中には、漢文化を受け入れ、漢民族と同化した元代ムスリムの子孫とされる人々が多く含まれています。

著名な色目人官僚

マフムード・ヤラワチ：チンギス・ハーン、オゴデイに仕えた。
アブドゥッラフマーン：オゴデイとドレゲネ皇后の寵臣。
蒲寿庚：南宋滅亡に貢献し、泉州の発展に寄与。
アフマド・ファナーカティー：中央アジア出身のムスリム財務官僚。
サイイド・アジャッル：中央アジア出身のムスリム財務官僚。
薩都剌：ムスリムの科挙官僚で、漢詩人として有名。
サンガ：ウイグル人またはチベット人の財務官僚。
ジャマールッディーン：ムスリムの天文学者。
ダウラト・シャー：ムスリム官僚で、泰定帝イェスン・テムル期の権臣。
マルコ・ポーロ：イタリア人。ただし、彼が元の宮廷に仕えたという通説には疑問も呈されている。

参考文献

杉山正明『遊牧民からの世界史 民族も国境もこえて』日本経済新聞社、1997年。
斯波義信ほか（編）『世界歴史大系 中国史3 五代～元』山川出版社、1997年。
* 舩田善之「元朝治下の色目人について」『史学雑誌』第108編第9号、1999年。

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