芝山町長宅前臨時派出所襲撃事件
芝山町長宅前臨時派出所襲撃事件
1977年5月9日未明、千葉県山武郡芝山町長宅前に設置されていた臨時派出所が、火炎瓶などで武装した集団に襲撃され、警察官1名が殉職した痛ましい事件です。
事件の概要
当時、成田空港建設を巡り、激しい三里塚闘争が繰り広げられていました。1977年1月、福田内閣が新東京国際空港の年内開港を閣議決定したことを受け、空港開港絶対阻止を掲げる反対同盟と新左翼セクトは、空港建設を妨害するための岩山大鉄塔の防衛を最重要課題としていました。
同年1月15日には、空港推進派である真行寺一朗芝山町長宅に発煙筒が投げ込まれる事件が発生。これを受け、千葉県警察は町長宅前に臨時派出所を設置し、警察官による常時警備を開始しました。
5月6日、空港公団が反対派の不意を突いて岩山大鉄塔を強制撤去したことで、反対派の過激派は行動を激化させました。千葉県警察は警備体制を強化しましたが、5月9日未明、約50人の過激派集団が火炎瓶や角材、棍棒で武装し、臨時派出所を襲撃。非常用電話線を切断した上で窓を破り、数十本の火炎瓶を投げ込みました。これにより、派出所は全焼し、70メートル離れた場所に待機していた警察官輸送車にも火炎瓶が投げつけられました。派出所は激しい炎で鉄骨が飴のように曲がり、裏のタケノコは根元から炭化するほどでした。
襲撃により、派出所にいた警察官全員が重軽傷を負い、中でも全身に大やけどを負った巡査部長と2名の巡査は、東京警察病院に搬送されました。巡査部長は全身の80%に及ぶやけどに加え、火炎を吸い込んだことで気管支、胃、腸まで熱傷を負い、喉からは大量の煤が出ました。彼は火だるまになって路上を転げ回っていたところ、学生らから追い打ちをかけるように火炎瓶を投げつけられたといいます。
一時は回復の兆しを見せた巡査部長でしたが、敗血症と心不全を併発し、5月21日に殉職。彼は3歳と1歳の子を持つ父親であり、交通安全教室の指導で子どもたちに人気のある警察官でした。
この事件で殉職した警察官は二階級特進で警部となりました。成田空港問題での警察官の殉職者としては、東峰十字路事件に続いて4人目となりました。
事件の背景
事件前日の5月8日には、岩山大鉄塔撤去に抗議する反対派と機動隊が衝突しており、その際、反対派支援者の東山薫氏が、機動隊が放った催涙ガス弾の直撃を受け重体となっていました。東山氏は2日後に死亡し、この事件（東山事件）に対する報復として、今回の襲撃事件が起きたと考えられています。
元反対同盟員は、「抜き打ち撤去と仲間が殺されたことへの報復だから、人が死ぬのもしょうがない、仇をとったとしか思わなかった」と当時の心境を述べています。
警察による捜査
千葉県警察は、事件解明のため100人の専従捜査員を投入しました。5月18日には、成東警察署の派出所に覆面をした男たちが火炎瓶を投げ込む事件が発生し、逮捕された戦旗派の実行犯から襲撃集団を辿ろうとしましたが、容疑者を特定することはできませんでした。1992年に公訴時効が成立し、未解決事件となっています。
過激派のどのセクトも犯行声明を出していませんが、中核派が週刊誌で、「（東山事件の）報復戦として芝山町長宅を防衛していた機動隊にせん滅戦が敢行された」と実質的な関与を認める発言をしています。
なお、本事件の前に、千葉中央署の派出所、石神井署の派出所、空港の警備員詰所が連続して襲撃されており、これらについては中核派が犯行声明を出しています。
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参考文献
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