若港三郎

若港 三郎

若港 三郎（わかみなと さぶろう、本名：渡辺 孝一郎）は、1909年12月13日に山梨県南都留郡鳴沢村で生を受け、1982年6月30日に72歳で生涯を閉じた元大相撲力士です。身長190センチメートル、体重123キログラムという恵まれた体格を持ち、富士ヶ根部屋に所属しました。最高位は東前頭3枚目。

経歴

大相撲界への第一歩は、1931年3月場所。すでに20歳を迎えていた若港（当時の四股名は冨士ヶ嶽孝一郎）は、富士ヶ根部屋から初土俵を踏みました。年長の入門者であったにもかかわらず、その昇進は比較的順調に進みました。特に1932年2月場所では、当時の相撲界を揺るがした春秋園事件の影響もあり、序二段を経ずに三段目へ昇進するという異例の経緯をたどります。

1935年1月場所には新十両昇進を果たしますが、この場所は残念ながら負け越し、再び幕下へ番付を下げます。しかし、1937年5月に再度十両の地位に戻ると、10勝3敗という好成績を収め、翌1938年1月場所で新入幕を果たしました。この時、すでに28歳を迎えており、遅咲きの幕内力士と言えるでしょう。

力士としての特徴

幕内での彼の相撲ぶりは、左四つからの強烈な吊りが武器でした。しかし、相撲運びがやや消極的であったためか、幕内上位には定着できず、東前頭3枚目が自己最高位となりました。大関や横綱といった上位陣を脅かすほどの活躍は少なく、殊勲の星として特筆されるのは、1941年1月場所で新大関の五ッ島から挙げた白星程度にとどまります。

年寄・部屋経営

現役中の1942年1月、師匠の死去に伴い、若港は現役力士でありながら年寄名跡（富士ヶ根）を継承するという「二枚鑑札」となります。これを機に、四股名も「若港」と改めました。部屋の師匠としては、当時有望な若手であった弟弟子の東冨士（後の第40代横綱）を熱心に指導し、その大成に貢献しました。

1945年11月場所で十両に陥落し、全休したのを最後に現役を引退。年寄富士ヶ根として相撲部屋経営に専念します。しかし、1947年6月場所を最後に部屋を閉じ、所属力士たちを高砂部屋に移籍させました。その後は日本相撲協会内で勝負検査役などを務めましたが、1951年には高砂親方との交代で平年寄に降格。一時的に1955年1月に部屋を再興するものの、すぐに閉鎖となりました。以降は時津風部屋預かりの年寄として、1974年12月の停年退職まで相撲協会に在籍し続けました。

人物・エピソード

若港親方はその並外れた怪力で知られていました。現役時代には、力士が湯に浸かったままの、およそ250キログラムにも及ぶ五右衛門風呂を軽々と持ち上げて移動させたという逸話や、清酒の一升瓶48本を難なく土俵下から吊り上げてみせたという豪快なエピソードが伝えられています。

また、相撲界とは別に、長年にわたり幼稚園の園長を務めていたという一面も持っており、その多彩な才能を示すものでしょう。

主な成績・改名歴

幕内在位場所数: 16場所
幕内通算成績: 95勝121敗
改名歴: 冨士ヶ嶽孝一郎 → 若港三郎 → 若湊三郎
年寄名: 冨士ヶ根 邦之佐（1945年11月 - 1974年12月）

若港三郎は、現役としては最高位こそ高くありませんでしたが、二枚鑑札での部屋経営、横綱東富士の育成、そして引退後の相撲協会における活動を通じて、長く角界に貢献した人物です。

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関連項目:
* 大相撲力士一覧


（出典：日本相撲協会公式サイト 力士名鑑など）

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