若秩父高明

若秩父高明（わかちちぶ こうめい）は、1939年3月16日に埼玉県秩父郡高篠村（現：秩父市）で生まれ、2014年9月16日に75歳で亡くなった大相撲力士です。本名は加藤高明（かとう こうめい）。花籠部屋に所属し、最高位は西関脇でした。

生い立ちと入門

旧陸軍軍人の家に長男として生まれた若秩父は、幼少期から大食漢で体格が大きく、中学校では相撲部に所属していました。高校時代に花籠部屋の興行を見学した際、その場でスカウトを受け、相撲好きだったことから入門を決意します。当初は母親に反対されましたが、地元病院長らの説得により、高校を中退して花籠部屋に入門しました。

力士としての活躍

1954年5月場所、15歳で初土俵を踏んだ若秩父は、故郷の秩父と兄弟子の若乃花幹士（第45代横綱）から四股名を取りました。入門後も大食は変わらず、幕下時代には毎食どんぶり飯10杯を平らげたといいます。若乃花の指導と自身の熱心な稽古により、順調に出世を重ね、1958年1月場所には新十両に昇進。同年5月場所では、7人による十両優勝決定戦を制し、十両優勝を果たしました。この7人は、当時有望な若手力士として「7人の侍」と呼ばれ、注目を集めました。

新入幕となった1958年9月場所では、12勝3敗と好成績を収め、敢闘賞を受賞。同じく新入幕の富樫や豊ノ海と共に「ハイティーン・トリオ」として人気を集めました。1959年1月場所では、横綱・千代の山雅信から金星を奪う大金星を挙げ、この取組は若秩父本人が生涯最高の思い出として語っています。この場所で10勝5敗と大きく勝ち越し、翌場所には19歳11ヶ月という若さで新小結に昇進し、史上初の10代三役力士となりました。

1960年5月場所では13勝2敗という好成績を残しましたが、西前頭14枚目という地位の低さから三賞は見送られました。巨腹を活かした吊りや寄りを武器に、物怖じしない性格と熱心な稽古で大関昇進を期待されていましたが、糖尿病を発症したことが大きな壁となり、三役定着を果たすことはできませんでした。しかし、禁酒・禁煙を徹底し、食事制限にも取り組み、幕内への再入幕を果たしました。その姿は他の力士の模範となりました。

また、若秩父は、土俵上での塩撒きのパフォーマンスでも知られています。ある時、中洲で泥酔客を吹っ飛ばしたことが「暴力」と報じられた鬱憤を晴らそうと、制限時間一杯の際に大量の塩を高々と撒き始めたのです。この塩撒きは、当時少量の塩を指先で撒いていたベテラン力士の出羽錦忠雄と比較され、川柳にも詠まれました。

引退後

1968年11月場所を最後に現役を引退し、年寄・関ノ戸を経て同・常盤山を襲名しました。花籠部屋付きの親方として後輩の指導に尽力しましたが、1985年12月の花籠部屋閉鎖に伴い、放駒部屋へ移籍しました。1998年には日本相撲協会の監事に就任し、巡業部副部長も務めました。2004年3月場所千秋楽をもって停年退職しました。

2014年9月16日、肝不全のため75歳で亡くなりました。

主な戦績

通算成績：570勝527敗5休　勝率.520
幕内成績：367勝398敗　勝率.480
現役在位：80場所
幕内在位：51場所
三役在位：6場所（関脇2場所、小結4場所）
連続出場：1097回
三賞：2回（敢闘賞2回）
金星：3個
各段優勝：十両優勝2回、幕下優勝1回、序二段優勝1回

改名歴

若秩父 高明：1954年9月場所 - 1959年3月場所、1960年5月場所 - 1963年11月場所、1966年11月場所 - 1968年11月場所
若秩父 清邦：1959年5月場所 - 1960年3月場所
若秩父 浩之：1964年1月場所 - 1966年9月場所

年寄変遷

関ノ戸 高明：1968年11月 - 1969年1月
常盤山 高明：1969年1月 - 2004年3月

著書

* 『若秩父ーッ。○●の世界を生きて50年』

若秩父高明は、そのユニークなキャラクターと、不屈の精神で多くのファンを魅了した力士でした。

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