苻柳

苻柳（ふ りゅう）

苻柳は、五胡十六国時代の前秦の皇族であり、初代君主である苻健の八男として生まれた人物です。彼の生涯は、前秦の政治情勢と深く関わり、反乱と討伐の歴史に彩られています。

生涯

父である苻健から寵愛を受けていたとされる苻柳は、351年に苻健が前秦を興すと、晋公に封じられました。355年には、兄である天王太子・苻萇の死後、後継者争いに巻き込まれます。強皇后は苻柳を太子に推しましたが、苻健は讖文を理由に苻生のほうがふさわしいとして、苻生を太子に立てました。

苻健の死後、兄の苻生が即位すると、苻柳は征東大将軍・并州牧に任じられ、蒲坂を鎮守します。356年には、前涼への使者として、降伏を勧める役割を担いました。しかし、357年に従弟の苻堅が苻生を殺害して即位すると、苻柳は車騎大将軍・尚書令に任じられます。

張平が前秦との国境を侵犯すると、苻柳は都督并冀二州諸軍事・并州牧に任じられ、蒲坂の防衛を命じられます。364年には、兄の汝南公・苻騰が苻堅に反旗を翻しますが、苻柳もこれに加担していました。しかし、苻堅は苻柳を不問にしました。王猛は苻堅に対し、苻生の弟たちを誅殺すべきだと説きましたが、苻堅は許しませんでした。

367年、苻柳は苻双と共に再び反乱を企て、魏公・苻廋、燕公・苻武を仲間に引き入れようとしました。苻堅は苻柳らに長安へ来るように命じますが、苻柳らは拒否し、368年に一斉に兵を挙げて苻堅に反旗を翻します。苻堅は使者を派遣して説得を試みましたが、苻柳らは従いませんでした。

苻堅は討伐軍を派遣し、王猛率いる軍勢が蒲坂を攻撃します。苻柳は王猛を挑発しますが、王猛は応じません。苻柳は王猛を恐れていると思い込み、蒲坂の守りを子の苻良に任せて長安へと軍を進めます。しかし、王猛は鄧羌に夜襲を掛けさせ、苻柳軍を撃破します。苻柳は蒲坂へ戻りますが、王猛は追撃し、蒲坂を陥落させます。苻柳は妻子と共に処刑され、その首は長安へ送られました。

苻柳の反乱は、前秦の安定を揺るがす出来事となりました。彼の死後、苻双、苻武、苻廋も討伐され、前秦の皇族間の権力闘争は激化していくことになります。

参考文献

『晋書』巻112 載記12、巻113 載記13
『資治通鑑』巻99-101

もう一度検索