袁喬

袁喬（えん きょう）

袁喬（生没年不詳）は、東晋時代の官僚・軍人であり、字は彦叔（げんしゅく）といい、本貫は陳郡陽夏県にあります。

経歴

袁喬は袁瓌（えんき）の子として生まれました。初めは著作佐郎（ちょささろう）を務め、その後、桓温（かんおん）に求められて輔国司馬（ほこくしば）となりました。司徒左西属（しとさせいぞく）に任じられましたが就任せず、尚書郎（しょうしょろう）に任じられました。桓温が京口（けいこう）に駐屯すると、袁喬は再び輔国司馬となり、広陵国相（こうりょうこくしょう）を兼任しました。

袁喬は褚裒（ちょほう）と親交がありましたが、褚裒の娘である康献褚太后（こうけんちょたいごう）が臨朝称制（りんちょうしょうせい）していた時期であったため、穆帝（ぼくてい）の外祖父との親密な交際を避けるようになりました。

その後、安西諮議参軍（あんせいしぎさんぐん）・長沙国相（ちょうさこくしょう）に転じましたが、いずれも赴任しませんでした。ほどなくして、都督沔中諸戍江夏隨義陽三郡諸軍事（ととくべんちゅうしょしゅこうかえいぎようさんぐんしょぐんじ）・建武将軍（けんぶしょうぐん）・江夏国相（こうかこくしょう）に任じられました。

永和2年（346年）、桓温が成漢（せいかん）に対する西征を計画した際、多くの官僚が反対しましたが、袁喬は漢軍が防御を固める前に短期決戦で攻め落とし、漢主の李勢（りせい）を捕らえるように桓温に進言しました。桓温は袁喬の意見を採用し、袁喬は江夏国相として2000人の兵を率いて先鋒を務めることになりました。

永和3年（347年）、軍を彭模（ほうぼ）に進め、漢軍と対峙しました。晋軍の軍議では兵を分けて二手に分かれて進む作戦が有力でしたが、袁喬は全軍を一つの道に集中させて進軍すべきだと主張し、桓温もこれに賛同したため、全軍が一挙に進軍することになりました。

成都（せいと）から10里の地点で、桓温率いる晋軍は漢軍と決戦に及びましたが、先鋒部隊が敗北し、袁喬の兵も後退を余儀なくされ、敵の矢が馬首に迫るほどの苦戦となりました。袁喬は軍旗を振って兵を鼓舞し、漢軍を撃破し、そのまま成都に突入しました。李勢は降伏しましたが、成漢の将軍である鄧定（とうてい）と隗文（かいぶん）が部下を率いて抵抗を続けたため、桓温は鄧定を討伐し、袁喬は隗文を攻撃して打ち破りました。

袁喬は龍驤将軍（りゅうじょうしょうぐん）の号を授けられ、湘西伯（しょうせいはく）に封じられました。しかし、間もなく36歳で亡くなりました。死後、益州刺史（えきしゅうしし）の位が追贈され、簡（かん）と諡されました。

袁喬は文才にも恵まれており、『論語』や『詩経』に注釈を施したほか、数多くの著作が当時広く読まれました。

子の袁方平（えんほうへい）が後を継ぎ、義興郡（ぎこうぐん）や琅邪郡（ろうやぐん）の太守を歴任しました。

伝記資料

* 『晋書』巻83 列伝第53

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