茨木童子

茨木童子

茨木童子（いばらきどうじ）は、平安時代に大江山を本拠として京都を荒らし回ったとされる鬼の一人です。茨城童子とも書かれます。酒呑童子の最も重要な家来として知られています。

出生

茨木童子の出生地には、摂津国（大阪府茨木市水尾、または兵庫県尼崎市富松）という説と、越後国（新潟県長岡市の軽井沢集落）という説があります。生まれた頃から歯が生え揃っていたり、巨体であったりと、周囲から恐れられていました。鬼と化した後は酒呑童子と出会い、舎弟となり、共に京を目指したとされています。

越後説

茨木童子は酒呑童子と同じく越後出身との説があります。酒呑童子は蒲原郡の砂子塚（現・新潟県燕市砂子塚）生まれで国上寺の稚児でしたが、茨木童子は古志郡の山奥の軽井沢（現・新潟県長岡市軽井沢）の生まれで、弥彦神社に預けられていたとされます。この地には酒呑童子と茨木童子が相撲を取った場所があり、茨木童子を祀る祠もあります。また、この地区には「茨木」姓が多く、茨木姓の家では節分に豆をまかない習わしや、家の屋根に破風を作ると不良が出るといった言い伝えがあります。

酒呑童子同様、茨木童子も美少年として多くの女性に言い寄られ、将来を案じた母親によって弥彦神社に送られました。ある時、弥彦神社から実家に帰ると、母親が行李の中に隠した「血塗の恋文」を見つけます。その血を指で一舐めすると、たちどころに形相が変わり鬼となり、梁をつたい破風を壊して逃げていったと伝えられています。

摂津説

茨木童子の出生地については、兵庫県尼崎市や大阪府茨木市の説もあり、『摂津名所図会』などの資料で紹介されています。1701年刊行の『摂陽群談』では、摂津国の富松の里（現・兵庫県尼崎市）で生まれ、茨木の里（茨木市）に産着のまま捨てられていたところを酒呑童子に拾われ、茨木の名をつけて養われたとされています。

茨木市の伝承では、茨木童子は水尾村（現・茨木市）の生まれで、16ヶ月の難産の末に生まれたときにはすでに歯が生え揃い、生まれてすぐに歩き出したとされます。父は鬼のような赤子を持て余し、隣の茨木村の九頭神の森近くにある髪結床屋の前に捨て、以後茨木童子は床屋夫妻の子として育ちました。幼くして体格も力も大人を凌いだ童子は、床屋の仕事を教えても落ち着かず、ある日客の顔を傷つけてしまい、血をなめるとその味が癖になってしまいます。その後、自分の顔が鬼になっていることに気づき、北の丹波の山に逃げ、やがて酒呑童子と出会い家来となったと伝えられています。

大江山の鬼退治

酒呑童子の一味による被害があまりにも大きかったため、源頼光が鬼退治に行くことになり、配下の頼光四天王（渡辺綱・坂田金時・碓井貞光・卜部季武）や友人の藤原保昌らと共に大江山に向かいました。山伏の姿になった一行は、さまざまな人々の助けを得ながら酒呑童子の本拠に侵入し、酒宴で酔って動かなくなった鬼たちを退治しました。しかし、茨木童子のみは渡辺綱との戦いの後、逃げることに成功したとされています。

渡辺綱と茨木童子の戦い

渡辺綱と茨木童子の物語は、様々な作品で語り継がれています。

『前太平記』
『御伽草子』
『茨木』（歌舞伎）
『戻橋』（歌舞伎）
『羅生門』（能）
『綱館』（長唄）

これらの物語では、渡辺綱が茨木童子の腕を切り落とすが、茨木童子は腕を取り戻しに綱の元へやってくるという筋書きが一般的です。

一条戻橋

茨木童子は、堀川にかかる一条戻橋の上に出現することが多いとされます。若い美女に化けて道に困っていたため、渡辺綱が馬に乗せてやると、女は突然鬼の姿になり、綱の髪の毛を掴んで愛宕山に連れ去ろうとしました。綱は名刀・髭切で鬼の腕を切り、難を逃れたと伝えられています。

綱は、切り取った鬼の腕を源頼光に見せました。頼光が陰陽師に相談したところ、「必ず鬼が腕を取り返しにやって来るから、七日の間家に閉じこもり物忌みをし、その間は誰も家の中に入れないように」と言われます。七日目の晩、綱の伯母（または養母）が訪れ、嘆き悲しむ姿を見た綱は、言いつけを破って伯母を屋敷に入れてしまいます。しかし、伯母は茨木童子の化けた姿であり、腕を持ったまま飛び上がり、空の彼方に消えたとされています。

羅生門

渡辺綱が茨木童子の腕を切り落とすのは羅生門という物語もあります。羅生門に鬼が出るという話を聞いた綱が度胸試しに出かけると鬼に出会い、格闘の末、鬼の腕を切り落とします。その後、茨木童子は姿を変え、腕を取り戻しに現れたとされています。

茨木童子のその後

腕を取り戻した後の茨木童子の行方は定かではありません。摂津の民話では、実家に帰った話や、追い返された話などが残っています。

酒呑童子との関係

茨木童子とともに京都を荒らした酒呑童子との関係については、様々な説があります。茨木童子は男の鬼ではなく、女の鬼だったという説や、酒呑童子の息子、あるいは恋人だったという説も存在します。酒呑童子が殺されたとき、女ゆえに鬼とは見なされず殺されなかったという説もあります。

脚注

関連項目

日本の妖怪一覧
羅城門の鬼
茨木市

外部リンク

怪異・妖怪伝承データベース
* 茨木童子伝承 - 栃尾観光協会

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