菅平ダム

菅平ダム：歴史と多目的利用

菅平ダムは、長野県上田市、信濃川水系神川に位置する高さ41.8mの重力式コンクリートダムです。このダムは、かんがい、上水道、水力発電という複数の目的を果たす長野県営の多目的ダムであり、そのダム湖は菅平湖と呼ばれています。

建設の歴史

菅平高原におけるダム建設の構想は、第二次世界大戦以前から存在していました。1927年頃には地元の上田商工会議所から水力発電を目的とした提案がありましたが、世界恐慌や戦争の影響で一時的に計画は中止となりました。しかし、戦後、食料増産のための農地開発が活発になると、降水量の少ないこの地域では農業用水の安定確保が急務となり、ダム建設の構想が再燃しました。

当初は、菅平高原から流れ出る大洞川をせき止める大洞ダム（仮称）が計画されましたが、上流での硫黄採掘による公害問題が発生し、大洞ダムの建設計画は中止されました。

その後、1957年になって再びダム建設構想が持ち上がりました。当初は農業用水の安定供給が主な目的でしたが、建設費用の負担が大きいことから、発電と上田市への上水道供給も目的に追加され、特定多目的ダム法の適用を受けられるようにしました。これにより、洪水調節は目的には含まれず、利水に特化したダム事業として進められました。1961年に国の事業として採択され、1965年に菅平開発建設事務所が設置され、1968年に菅平ダムが完成しました。

菅平方式

菅平ダムの建設費のうち、約1億円が地元負担として割り当てられました。地元財産区（上田市、真田町、東部町）は、この費用を捻出するために、菅平高原の広大な土地（約50万坪）を長野県企業局に無償で提供しました。長野県は提供された土地を保養地として造成し、売却することで約5億円の利益を得ました。この利益は工事費や土地改良区費に充てられ、残りは地元に交付されました。このユニークな資金調達方法は「菅平方式」と呼ばれ、長野県高原開発事業のモデルとなりました。

周辺環境

菅平ダムは、高原野菜の名産地であり、別荘やスキー場が整備されたリゾート地である菅平高原の玄関口に位置しています。上信越自動車道の上田菅平インターチェンジから国道144号線、国道406号線を経由してアクセスできます。ダム周辺には駐車場や案内板があり、ダム建設に関わった倉島藏二のレリーフも設置されています。

公共交通機関を利用する場合は、上田駅から上田バス菅平高原線に乗車し、「菅平ダム」バス停で下車します。

発電所

ダム下流には、菅平湖の水を利用した長野県営の水力発電所、菅平発電所があります。菅平湖から取水された水は導水路トンネルを通って発電所に送られ、最大5,400キロワットの電力を発生させています。発電所の運転制御は、長野県企業局の菅平ダム発電管理所が行っています。

関連項目

ダム
日本のダム
重力式コンクリートダム
都道府県営ダム
多目的ダム
河川総合開発事業
菅平高原
内村ダム

参考文献

上田市史編さん委員会編『上田近代史』上田市、1970年。
倉島藏二翁顕彰碑建立委員会「頌詞」1995年10月29日。
上田バス株式会社「上田バス時刻表」平成28年4月1日改正 (PDF)
長野県企業局編集発行『長野県営電気事業 30周年記念誌 県営発電の灯をともして30年』1988年。

外部リンク

ダム便覧　菅平ダム - 日本ダム協会Webサイト
菅平発電所 - 長野県北信発電管理事務所Webサイト
菅平ダム - 五洋建設Webサイト
長野県上田地域振興局農地整備課YouTube内公式アカウント
水と巡る信州上田地域の旅～菅平ダムと神川の水利用～ - 2018年12月25日公開
菅平ダム建設記録映像 - 2018年05月12日公開

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