菅豊

菅豊（すが ゆたか）

菅豊は、1963年10月、長崎県長崎市に生まれた日本の民俗学者です。現在、東京大学東洋文化研究所の教授を務めています。

研究領域

菅豊の研究は、日本と中国を主要なフィールドとし、地域社会における自然資源や文化資源の利用および管理形態、共有資源（コモンズ）のあり方、無形文化遺産の管理手法、伝統文化（特に錦鯉）のトランス・ナショナリズム、ヴァナキュラー文化など、多岐にわたります。これらのテーマを民俗学の視点から深く掘り下げています。また、彼はアカデミズムの枠を超えて社会と関わる学問のあり方にも強い関心を持ち、日本におけるパブリック・フォークロア（公共民俗学、「新しい野の学問」と称される）やパブリック・ヒストリーといった分野の理論的研究においても重要な役割を果たしています。

経歴

菅豊は、故郷長崎県の長崎北高等学校を経て、1986年に筑波大学第一学群人文学類を卒業しました。その後、筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科に進学しましたが、1991年に中途退学しています。

研究者としてのキャリアは、1991年から1996年まで国立歴史民俗博物館民俗研究部助手として始まりました。続いて、1996年から1999年まで北海道大学文学部助教授を務め、1999年には東京大学東洋文化研究所に移籍し、助教授、後に准教授となりました。2007年からは同研究所の教授に昇任し、現在に至っています。この間、2018年から2021年までは東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授を兼任していましたが、2021年以降は再び東京大学東洋文化研究所教授に専任となっています。

国立歴史民俗博物館助手時代の1998年には、「日本におけるサケ民俗の形成 民間宗教者の関与を中心として」と題する論文で博士（文学）の学位を取得しています。

国内での活動に加え、国際的な教育・研究交流も積極的に行っており、中国の中央民族大学民族学與社会学学院や大連外国語大学日本研究院で客員教授を務めたほか、アメリカのハーバード燕京研究所のVisiting Scholar、中国の復旦大学芸術人類学與民間文学研究中心特約研究員、山東大学文化遺産研究院流動崗教授、同大学が主催する学術誌《民俗研究》の編集委員会編集委員なども歴任しました。また、国内では2014年から2020年まで日本学術会議連携会員を務めました。

受賞歴

1993年10月：第13回日本民俗学会研究奨励賞
2020年3月：新潟県小千谷市 小千谷市褒賞

主な著作

菅豊の主要な著作は以下の通りです。

単著
『修験がつくる民俗史 ―鮭をめぐる儀礼と信仰』（吉川弘文館、2000年）
『川は誰のものか ―人と環境の民俗学』（吉川弘文館、2006年）
『「新しい野の学問」の時代へ ―知識生産と社会実践をつなぐために』（岩波書店、2013年）
『鷹将軍と鶴の味噌汁―江戸の鳥の美食学』（講談社、2021年）
『河川的帰属―人與環境的民俗学』（郭海紅訳、中西書局、2020年）

共著
『日本の民俗2 ―山と川』（湯川洋司、福澤昭司と共著、吉川弘文館、2008年）
『「二〇世紀民俗学」を乗り越える ―私たちは福田アジオとの討論から何を学ぶか?』（福田アジオ、塚原伸治と共著、岩田書院、2012年）
『土偶を読むを読む』（文学通信、2023年）

単編著
『人と動物の日本史3 ―動物と現代社会』（吉川弘文館、2009年）

共編著
『ローカル・コモンズの可能性 ―自治と環境の新たな関係』（三俣学、井上真と共編、ミネルヴァ書房、2010年）
『民俗学の可能性を拓く ―「野の学問」とアカデミズム』（岩本通弥、中村淳と共編、青弓社、2012年）
『パブリック・ヒストリー入門―開かれた歴史学への挑戦』（北條勝貴と共編、勉誠出版、2019年）

これらの著作を通じて、菅豊は民俗学の知見を現代社会の課題に結びつけ、学術研究の新たな可能性を追求しています。

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