落陽 (映画)

映画『落陽』：激動の時代を映す歴史大作の光と影

1992年に公開された『落陽』は、日活創立80周年を記念して製作された歴史大作です。原作は伴野朗の小説『落陽　曠野に燃ゆ』で、伴野自身が監督を務めました。中国大陸での大規模なロケーション撮影を敢行し、製作費50億円という巨額の予算が投じられた超大作として話題を呼びましたが、興行的には成功を収めることができませんでした。

制作の舞台裏

本作の製作過程は、数々のドラマに彩られています。当初、監督には映画経験のない原作者の伴野朗が抜擢されましたが、実質的な監督はプロデューサーの藤浦敦であったとされています。藤浦は、伴野には何の権限も与えず、途中から現場に現れなくなったと語っています。この監督交代劇は、当時の映画界でも大きな話題となりました。

ストーリー

物語は、満州国建国を背景に、関東軍を追われた元将校の賀屋達馬が、資金調達の任務を帯びて満州に渡ることから始まります。そこで賀屋は、かつての恋人で馬賊の女首領となった張蓮紅と再会し、日本軍の思惑や阿片密売組織の暗躍に巻き込まれていきます。満州国に夢を託す賀屋の運命は、激動の時代に翻弄されていきます。

キャスト

豪華キャストも見どころの一つです。主人公の賀屋達馬を演じるのは加藤雅也、馬賊の女首領・張蓮紅にはダイアン・レイン、秘密結社「青幇」の首領・杜月笙にはユン・ピョウ、英国の悪徳商人ジョン・ウィリアムスにはドナルド・サザーランドといった国際的なスターが名を連ねています。その他にも、中村梅之助、中村梅雀、室田日出男、星野知子、松浦豊和、嵐圭史、尾藤イサオ、小牧ユカ、汀夏子、ナンシー・ラルマン、金田龍之介、にしきのあきら、新藤栄作、川地民夫、立川談志、鈴木礼之介、内藤陳、大林丈史、鈴々舎馬風、宍戸錠、黒田アーサー、星セント、小島三児、澤田謙也、砂塚秀夫、岡崎二朗、水野晴郎、根岸明美、桐島かれん、松旭斎ちどり、灘康次とモダンカンカン、芦田伸介、島田正吾、田村高廣、江守徹など、豪華な顔ぶれが揃いました。

制作費と興行成績

本作には、製作費として50億円もの巨額の予算が投じられました。しかし、興行収入は5億円にとどまり、結果として大きな赤字を計上することになりました。この興行的な失敗は、製作に関わった人々に大きな衝撃を与えました。

配給を巡る騒動

配給を巡っても、様々な騒動がありました。当初、松竹に配給を依頼する予定でしたが、藤浦敦の意向で東映が配給を担当することになりました。しかし、この決定には、日活内部での権力闘争が絡んでいたとされています。また、東映との交渉の席では、藤浦が東映社長の岡田茂と激しく対立したというエピソードも残っています。

映画のその後

『落陽』の興行的な失敗は、日活の経営危機を招く一因となりました。本作公開から半年後の1993年春には、日活の経営危機がマスメディアで報じられ、同年7月1日には会社更生法適用を申請することになります。藤浦敦は、本作の失敗は自身の責任であるとしながらも、日活の倒産は本作とは無関係であり、経営陣の失策が原因であると主張しています。

『落陽』は、その壮大なスケールと豪華キャスト、そして制作をめぐる様々なドラマから、公開から30年以上経った今でも、多くの映画ファンに語り継がれています。歴史の波に翻弄された人々の姿を描いた本作は、現代社会においても多くの示唆を与えてくれます。

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