蒸ノ湯温泉

蒸ノ湯温泉

秋田県鹿角市八幡平の山腹、標高約1,100mに位置する蒸ノ湯温泉（ふけのゆおんせん）は、宝永年間に開湯したとされる歴史ある一軒宿の温泉地です。かつては陸奥国、明治以降は陸中国に属したこの地は、周辺の温泉地と共に、1959年に国民保養温泉地「八幡平温泉郷」の一つに指定されています。

温泉の特長

蒸ノ湯温泉の源泉は性質の異なる三つがあり、主に酸性泉と単純温泉が湧出します。いずれも加水・加温なしの源泉掛け流しで、豊富なお湯が浴槽を満たしています。湯は透明ですが、源泉によっては湯の花が多く含まれ、湯船の中で白濁した様を楽しむことができます。

温泉地の施設

温泉施設は、一軒宿「ふけの湯温泉」と、宿から数百メートル離れた沢沿いのエリアに分かれます。本館には男女別の内湯と露天風呂があり、離れのエリアには野趣あふれる混浴露天風呂が五つ、女性専用露天風呂、そして地熱を利用したオンドル浴小屋が点在しています。露天風呂周辺にはランプが灯され、幻想的な雰囲気に包まれます。子宝にご利益がある「ふけの湯神社」には男性器を象った金勢様が祀られています。日帰り入浴も可能です。

歴史

開湯は宝永年間（1704～1711年）と伝えられます。かつて温泉地の中心で本館や湯治棟が建ち並んでいましたが、1973年（昭和48年）の地滑り災害により全壊し、復旧を断念。当時離れだった旅館部が現本館となり、歴史が引き継がれました。1959年9月3日には、八幡平温泉郷として国民保養温泉地に指定されています。

アクセス

蒸ノ湯温泉へのアクセスは、自家用車または公共交通機関（主にバス）を利用します。

• - 車: 八幡平アスピーテライン沿いの大深温泉バス停付近にある案内を目印に、側道へ下ります。東側からは東北自動車道松尾八幡平ICや国道282号、西側からは国道341号を経由してアスピーテラインへ入りますが、冬季は閉鎖される区間があるため注意が必要です。
• - 公共交通機関: 温泉地近くに鉄道駅がないため、JR花輪線の鹿角花輪駅・八幡平駅、またはJR秋田新幹線の田沢湖駅から路線バスに乗り継ぎます。バス路線は複数ありますが、蒸ノ湯温泉バス停への毎日運行便は少なく、特定の期間・曜日のみ運行の路線が多いです。最寄りの「アスピーテライン入口」バス停からも宿まで距離があるため、バスの運行状況や宿泊者向け送迎の有無などを事前に確認することが重要です。

周辺

周辺には玉川温泉、後生掛温泉など、八幡平温泉郷を構成する個性豊かな温泉地が点在しており、湯めぐりを楽しむこともできます。

関連情報

漫画家つげ義春は、1967年秋に当地のオンドル浴場を訪れた際の体験をもとに、短編漫画『オンドル小屋』（1968年発表）を描いています。この作品は、当時の湯治場の雰囲気を伝えるものとして知られています。

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