蓬峠

蓬峠（よもぎとうげ）

蓬峠は、群馬県利根郡みなかみ町と新潟県南魚沼郡湯沢町の間に位置する標高1,529mの峠です。古くから上越国境を越える道として知られていました。

歴史

蓬峠は、三国街道の関所を通らずに往来できる庶民の道として利用されていました。記録には残っていませんが、背負い商人が物々交換のために行き来し、生活物資を運搬していました。清水、湯檜曽の番所では、彼らは比較的寛大に扱われていましたが、明治時代になると新政府によって通行が厳しく取り締まられるようになりました。また、凶作の際には、農民が出稼ぎのために秘密裏に峠を越えたとも言われています。

瑞祥庵（湯沢町）の本堂には、湯檜曽（みなかみ町）の山から切り出された木材が使われていますが、これは蓬峠を越えて運ばれたと伝えられています。近代になると、新潟県側からの往来は減少し荒れていましたが、1942年に国鉄山の家の髙波吾策が私財を投じて再整備しました。

登山道として

現在、蓬峠は国道291号の点線国道区間である清水峠の近くに位置し、登山道として整備されています。車両の通行はできません。

新潟県側からは、上越線土樽駅近くの蓬橋バス停から魚野川沿いに進み、万太郎橋から蓬沢沿いの林道に入ります。林道終点から登山道に入り、約3kmで峠に到着します。登山道は川沿いから始まり、東俣沢出合から急な上りとなります。尾根を越え、茶入沢を過ぎると水場があり、そこから稜線に出ると蓬ヒュッテがあります。ヒュッテから稜線を南に100mほど進むと蓬峠です。峠から群馬県側へ下ると白樺避難小屋があり、そこから土合駅へ向かう道が分岐します。

蓬峠は谷川連峰の登山道の中では比較的容易なコースで、縦走の入門コースや緊急時のエスケープルートとしても利用されています。周辺は笹原に覆われ、夏には高山植物が咲き乱れます。また、バックカントリースキーの対象にもなります。

アクセス

上越線土樽駅または土合駅

蓬ヒュッテ

蓬峠の近くには、1952年に建てられた蓬ヒュッテがあります。当初は避難小屋でしたが、現在は約20名を収容できる営業小屋として利用されています。谷川連峰、上越国境三国山脈の縦走路では、ここより北には有人小屋はありません。

山の鐘

蓬ヒュッテには、かつて谷川連峰の五つの小屋（土合山の家、谷川岳肩ノ小屋、蓬ヒュッテ、平標小屋、土樽山の家）にあった「山の鐘」の一つがあります。この鐘は1953年に榎本進によって製作され、駒草山荘の長谷川勇によって寄贈されました。鐘には、川崎隆章によって詠まれた短歌が刻まれており、岳人の友情、山の誓い、遭難防止の願いが込められています。それぞれの鐘の音色には特徴があり、悪天候時や黎明薄暮時には道しるべとしての役割を果たしました。

蓬の鐘 - 「巡りきし峠は目路のひらけきて日は寂かなり亡き友思う」

関連項目

日本の峠一覧
中央分水嶺
上越国境
花の百名山

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