薬師恵日

薬師恵日（くすし の えにち）

薬師恵日（生没年不詳）は、飛鳥時代に活躍した官人であり、医術にも精通した人物です。高句麗からの渡来人をルーツに持ち、遣隋使や遣唐使として大陸に渡り、日本の医療発展に大きく貢献しました。

生涯

恵日の祖先である徳来は、元は高句麗に住んでいましたが、後に百済へ移住しました。雄略天皇7年（463年）、百済から日本へ渡来。これは、雄略天皇の命を受けた吉備上道弟君と吉備海部赤尾らが、百済に対して優秀な技術者（才伎）を求めた結果によるものでした。

推古天皇16年（608年）、恵日は第三回遣隋使に小野妹子に従って随へ渡り、本場で医術を学びました。留学中には、618年に隋が滅亡し唐が建国するという歴史的な出来事を経験しています。推古天皇31年（623年）には、同じく医術を学んだ倭漢福因や学問僧の恵斉・恵光らと共に、新羅使・智洗爾の一行に加わり帰国を果たしました。

帰国後、恵日は薬師として活躍し、ついには薬師を фамилияとするまでになりました。舒明天皇2年（630年）には第一次遣唐使に大使・犬上三田耜に従い再び大陸へ。この時、恵日は以前の留学経験に基づき、舒明天皇4年（632年）の遣唐使節一行が学問僧の霊雲・旻や勝鳥養らを連れて帰国するよう進言したとされています。ちなみに、この時帰国しなかった留学生の高向玄理・南淵請安は、舒明天皇12年（640年）に百済・新羅の使者と共に新羅経由で帰国しています。

孝徳天皇の時代、白雉5年（654年）には第三次遣唐使の副使に任ぜられ、三度目の大陸渡航を果たしました。この時の冠位は大山下（従六位相当）であり、以前の大仁（正五位相当）よりも低いことから、何らかの理由で降格された可能性も指摘されています。

恵日は、医書として隋から『病源候論』、唐から『千金方』を日本へ伝えました。子孫は難波薬師を фамилияとしました。

参考文献

『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞社、1994年
『日本書紀 （三）』岩波文庫、1994年
『日本書紀 （四）』岩波文庫、1995年
宇治谷孟『日本書紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、1988年
宇治谷孟『続日本紀 （上）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
直木孝次郎『日本の歴史2 古代国家の成立』、中央公論社、1965年

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