藤ノ里栄藏

藤ノ里 栄藏

藤ノ里 栄藏（ふじのさと えいぞう）は、1901年（明治34年）4月10日に青森県南津軽郡藤崎町で生まれた、昭和戦前に活躍した大相撲力士である。本名は天内 栄三（あまない えいぞう）。出羽海部屋に所属し、最高位は東前頭6枚目まで昇進した。現役時代の体格は身長167cm、体重105kgと、当時の力士としてはやや小柄ながらもがっしりとしていた。左四つ、もろ差し、寄り、押しを得意手とした。

経歴

「相撲の神様」と称された大関大ノ里の甥にあたる藤ノ里は、同郷の元関脇である8代湊川（綾浪）の門を叩き、1920年（大正9年）1月場所で大相撲の土俵に初めて上がった。当初からの四股名は藤ノ里であった。順調に番付を上げ、1928年（昭和3年）3月場所には十両へ昇進。そして、29歳となる1930年（昭和5年）5月場所でついに新入幕を果たした。この間、師匠の死去に伴い高島部屋へ移籍した後、叔父である大ノ里が率いる出羽海部屋へと籍を移している。

しかし、自身にとって当時自己最高位となる西前頭5枚目の地位で迎える直前の1932年（昭和7年）1月場所前、相撲協会を揺るがす春秋園事件が勃発した。藤ノ里は大ノ里に同行し、髷（まげ）を落として協会を脱退したため除名処分を受け、その地位は記録に残らない幻となった。以後は関西角力協会に移り、大ノ里や天竜らと共に活動を続けたが、同協会の解散に伴い日本相撲協会へ帰参した。この時すでに36歳となっていた。

協会復帰は1938年（昭和13年）1月場所で、十両格番付外からの再出発となった。しかし翌5月場所には十両で見事優勝を果たし、1月場所後に大連で死去した叔父大ノ里への手向けとした。

力士として最も脂が乗る時期はすでに過ぎていたものの、復帰からわずか1年後の1939年（昭和14年）1月場所には再び幕内へ返り咲いた。その後も4年、8場所にわたり幕内の中位から下位の地位で奮闘を続け、1941年（昭和16年）1月場所では自己最高位となる東前頭6枚目まで昇進した（春秋園事件による空白があるため、一般的にはこの地位を最高位とする）。

特筆すべきは1941年（昭和16年）5月場所で、40歳1ヶ月という高齢ながら8勝7敗と勝ち越しを決めたことである。幕内において40歳を過ぎて勝ち越しを記録した力士は、実に73年後の2014年（平成26年）9月場所で旭天鵬勝が現れるまで、藤ノ里ただ一人であった。頭髪が薄くなるまで土俵を務めたことから「藤ノ里老」とも呼ばれたが、その気性は激しかったと伝わる。立合いでの駆け引きに長け、もろ差しからの鋭い寄りを見せたかと思えば、出るそぶりを見せてからとったりで相手を翻弄するなど、老獪な取り口で観客を魅了した。同時期に活躍した同じく高齢力士の大潮との取組は、国技館を大いに沸かせたという。

1943年（昭和18年）1月場所、十両に陥落したのを最後に41歳9ヶ月で現役を引退した。

引退後は年寄出来山を襲名し、後進の指導に当たったが、1947年（昭和22年）6月限りで協会を離れた。1949年（昭和24年）11月29日、48歳でその生涯を閉じた。

主な成績

通算成績: 207勝176敗2分1預36休（勝率.540）
幕内成績: 77勝97敗10休（勝率.443）
現役在位場所数: 45場所
幕内在位場所数: 14場所
金星: 1個（宮城山）
各段優勝: 十両優勝 1回（1938年5月場所）

関連項目

大相撲力士一覧
40歳以上まで現役を続けた力士一覧

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