藤原定能

藤原定能（ふじわら の さだよし）は、平安時代後期から鎌倉時代前期にかけての公卿であり、藤原北家道綱流の出身です。父は藤原季行、母は藤原宗能の娘とされています。官位は正二位・権大納言にまで至り、その家は樋口または二条と号しました。特に琵琶の名手として名を馳せています。

経歴

仁平2年（1152年）に従五位下に叙爵し、右兵衛権佐、近衛少将・中将といった武官や、播磨国・加賀国・丹後国の権介といった地方官を歴任しました。後白河院の側近として活躍し、安元2年（1176年）には院の推挙により蔵人頭に任官しました。これは、位階が上位にあった藤原雅長らを差し置いての異例の人事であり、右大臣・九条兼実も「希代」のことと評するほどでした。治承3年（1179年）正月には参議に任ぜられ公卿に列しますが、同年11月の治承三年の政変で院近臣の一人として左近衛権中将の官職を解任されています。その間、治承2年（1178年）には高倉天皇の石清水八幡宮及び賀茂神社への行幸で祭事を務め、その功績により治承5年（1181年）には従三位に叙されています。

その後も順調に昇進を重ね、寿永3年（1184年）に従二位・権中納言、文治5年（1189年）には正二位・中納言に任ぜられました。建久5年（1195年）には権大納言に至り、道綱流としては最も高位に昇った人物となりました。建久9年（1198年）には、子息である資家の右近衛少将任官と引き換えに権大納言を辞職しました。建仁元年（1201年）に出家し、法名を定阿と称しています。

系譜

父：藤原季行
母：藤原宗能の娘
妻：源通家の娘

男子：藤原親能（1169-1207）
男子：藤原定季（1173-1234）
男子：藤原資家（1182-1256）
男子：定乗
女子：粟田口忠良室
女子：坊門信清室
女子：源定忠室
女子：源兼忠室 - 嘉陽門院斎院宣旨
女子：大宮局 - 後鳥羽院後宮、尊円法親王生母、宜秋門院女房対御方

妻：藤原顕憲の娘
男子：定玄（1171-1247）

妻：源資賢の娘
生母不明の子女
男子：定観
女子：斎院女房宣旨
女子：殷富門院六条局
女子：持明院家行室
女子：順徳院女房大納言局

定能の子孫は二条家や平松家として繁栄しましたが、いずれも室町時代には断絶しています。

参考文献

新訂『徒然草』、西尾　実・安良岡康作校注、岩波文庫
校注『文机談』、岩佐美代子著、笠間書院
* 『圖書寮叢刊 伏見宮楽書集成一』、宮内庁書陵部編、明治書院

藤原定能は、その政治手腕と琵琶の才能で、平安末期の貴族社会において独特の存在感を放った人物でした。彼の生涯は、当時の朝廷の権力闘争と文化的な側面を色濃く反映しています。

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