藤原経任

藤原経任（ふじわら の つねとう）

藤原経任は、平安時代中期に活躍した公卿です。藤原北家小野宮流の出身で、父は権中納言の藤原懐平、そして後に大納言の藤原斉信の養子となりました。最終的な官位は正二位・権大納言にまで昇りつめ、その生涯は多くの出来事に彩られています。

経歴

経任の官歴は、三条天皇の時代に始まりました。1012年、太皇太后・藤原遵子の御給により従五位下に叙爵し、翌年には従五位上に昇進。侍従、右衛門佐と順調にキャリアを重ね、1014年には右近衛権少将に任ぜられます。三条天皇の治世末期には、皇后・藤原娍子の御給により、正五位下、次いで従四位下と立て続けに昇進を果たしました。

しかし、四位に昇進した頃に近衛少将を解任されたとみられ、後一条天皇が即位すると、昇進のペースは鈍化。1023年には、実に8年ぶりに従四位上に昇叙するにとどまりました。転機が訪れたのは、1029年に権左中弁に任ぜられた頃からです。翌年には蔵人頭（頭弁）となり、後一条天皇の後半期に入ると、重要な役職を歴任するようになります。1031年に正四位下に昇進した後、1035年には養父・藤原斉信の死と入れ替わるように参議に任ぜられ、四位昇進から20年を経て、ついに公卿の仲間入りを果たしました。1036年には従三位に叙せられています。

議政官としては、修理大夫、左兵衛督、検非違使別当を兼任し、1046年には正三位に昇叙。1048年には権中納言に昇進し、1051年には後冷泉天皇の皇后となった藤原寛子の皇后宮権大夫（後に皇后宮大夫）を務めました。1054年には正二位に叙せられ、1065年には権大納言にまで昇進しました。

1066年2月16日、経任は67歳でこの世を去りました。最終的な官位は権大納言正二位兼治部卿皇后宮大夫でした。

人物

経任は、養父である藤原斉信とは対照的に、その政敵とも言える右大臣・藤原実資と親密な関係を築いていました。内裏と実資の間を頻繁に行き来し、世間の噂を実資に伝えたり、実資から牛を贈られたり、病に伏せた際には見舞いの使者が立てられ、調伏の鬼気祭りが行われたりと、実資は経任の面倒をよく見ていたようです。この特異な人間関係は、当時の貴族社会の複雑さを物語るエピソードとして興味深い点です。

また、経任は日記『権大夫記』（『経任大納言記』）を残しており、当時の様子を知る上で貴重な資料となっています。

官歴

以下に、経任の主な官歴をまとめます。

1006年：童殿上
1012年：従五位下
1013年：従五位上、侍従、右衛門佐
1014年：右近衛権少将
1015年：正五位下、備後介、従四位下
1023年：従四位上
1029年：権左中弁
1030年：蔵人頭
1031年：正四位下、備後権守
1035年：参議
1036年：従三位、侍従
1038年：修理大夫
1043年：左兵衛督
1044年：検非違使別当
1046年：正三位
1048年：権中納言
1050年：検非違使別当を辞任、従二位
1051年：皇后宮権大夫、治部卿
1054年：正二位
1060年：左兵衛督を辞任
1061年：帯剣
1065年：権大納言、皇后宮大夫
1066年：薨去

系譜

父：藤原懐平
母：藤原佐理の娘
養父：藤原斉信
妻：源朝任娘
養子：藤原経忠、藤原公房

参考文献

『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第一篇』吉川弘文館、1987年
* 市川久編『近衛府補任 第一』続群書類従完成会、1992年

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