蘇威

蘇威の生涯と足跡

蘇威（そ い、542年 - 623年）は、隋王朝において重要な役割を果たした政治家です。字は無畏で、出身は武功郡にさかのぼります。彼は蘇綽の子であり、隋の文帝と煬帝の二代にわたり、その功績を称えられました。

幼少期と初期の経歴

蘇威の父である蘇綽は、西魏の権力者宇文泰に仕えていましたが、彼が5歳のときに急死しました。その後、蘇威は美陽県公の爵位を受け継ぎ、郡の功曹として事務を取り仕切ることになりました。北周の重臣である宇文護からは高く評価され、彼の娘との婚姻を提案されましたが、宇文護の権力志向を恐れ、蘇威は逃亡します。叔父の迫りもあり、やむを得ず結婚を承諾しますが、その後は山中で読書にいそしむ生活を送りました。

すぐに、彼は使持節・車騎大将軍・儀同三司の地位を与えられ、懐道県公に改封されました。武帝が地方を統治するようになると、彼は稍伯下大夫への昇進を果たし、宣帝の治世には開府儀同・大将軍にまでその地位を上げました。

隋の成立と政治的実権

隋国公の楊堅（後の隋の文帝）が丞相として北周の実権を掌握した際、蘇威はその実行力を見込まれて高熲によって楊堅に推薦されます。しかし、楊堅が禅譲を企てていることを知ると、蘇威はその謀議の仲間になることを躊躇し、再び故郷に逃げました。高熲が追及しましたが、楊堅は彼の気持ちを理解し、一時的に彼を放置するよう指示しました。

581年、楊堅が隋を成立させると、蘇威は太子少保に任命され、その後邳国公の地位を得るとともに、納言・戸部尚書の役割も兼任しました。彼は高熲と共に朝廷の政策を推進し、文帝から厚い信任を受け、刑部尚書や御史大夫、吏部尚書などを歴任しました。隋の法制度の構築に多大な貢献をし、589年には尚書右僕射としての地位も授与されます。

政界での浮き沈み

592年に国子博士の何妥が、蘇威の息子である蘇夔をめぐって宮中で議論が展開されましたが、蘇威の名声を恐れたために多くの者が蘇夔に同調しました。この騒動を受けて何妥は、蘇威が特定の人物と組んで人事を私的に管理していると告発し、蘇威は一時的に免官されますが、すぐに復職を果たしました。601年には再び尚書右僕射に任ぜられ、政治の第一線に復帰します。

煬帝の即位後には大将軍の称号も授与されましたが、607年に高熲らが誅殺されたことに連座し、再度免官されます。しかし、後に許され、再び納言として政治に参加し、その名声から「五貴」と称されることになります。

612年、煬帝が高句麗征伐を行う際には左武衛大将軍として参与し、光禄大夫に任じられました。年齢を理由に引退を願い出ましたが、煬帝は許可を与えず、翌年の高句麗への遠征にも参加します。度重なる労役や遠征の失敗により、各地で反乱が起こり、猶予されずに煬帝を諫めても聞き入れられることはありませんでした。616年には讒言を受けて不遇な扱いを受けつつも、煬帝の行幸に随行しました。

晩年と遺産

618年、宇文化及によって煬帝が暗殺されると、蘇威は光禄大夫・開府儀同三司に再任されます。宇文化及が敗北すると、彼は李密に仕官し、その後王世充に転属します。621年、王世充が唐に滅ぼされると、蘇威は唐に帰顺し、長安で生涯を閉じました。享年82歳でした。

蘇威は誠実さと廉直さを持ち合わせた政治家として評判を受け、他者の異なる意見を憎む気性を持つ一方で、反乱が発生すると煬帝の意向を伺って報告を操作し、討伐軍が勝利する機会を自ら狭めていたと言われています。

伝記資料

• - 『周書』巻23 列伝第15
• - 『隋書』巻41 列伝第6
• - 『北史』巻63 列伝第63

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