行願寺

行願寺（ぎょうがんじ）は、京都市中京区行願寺門前町にある天台宗に属する寺院です。山号は霊麀山（れいゆうざん）、本尊として千手観音を祀っており、通称は革堂（こうどう）です。この寺院は、西国三十三所の第19番札所であり、洛陽三十三所観音霊場でも第4番の札所となっています。特筆すべきは、西国三十三所において唯一の尼寺としての歴史を持つことです。また、寺院の本尊にまつわる真言は「おん ばざら たらま きりく そわか」であり、同様に詠まれる歌は「花を見ていまは望みも革堂の　庭の千草（ちぐさ）も盛りなるらん」となっています。

行願寺の歴史は非常に興味深いものであり、例えば『百錬抄』や『日本紀略』によると、この寺院は寛弘元年（1004年）に行円によって一条小川の一条北辺堂跡地に再興されたとされています。一条北辺堂の存在は、歴史的にも確認されており、特に『日本紀略』の永祚元年（989年）8月13日には「一条北辺堂舎倒壊」との記録が残っています。当初の寺地は現在の上京区に位置し、その名残として周辺には革堂町、革堂仲之町、革堂西町などの町名が残されています。

行円は仏門に入る前には狩猟に従事していましたが、ある日、雌鹿を射た際に、その鹿の腹から子鹿が誕生するのを目撃し、命の大切さを悟って仏門に入ったと言われています。彼はその雌鹿の皮を身につけ続けたため、皮聖や皮聖人として知られ、以後、革堂という寺名もその由来に関係しています。行円についての詳細な生没年は不明ですが、彼は比叡山の横川出身の聖者として考えられています。藤原道長の子、藤原顕信は寛弘9年（1012年）に行円のもとで剃髪し、出家したことも記録されています。

寺院の歴史の中で、いくつかの火災や再建のエピソードが存在します。保延6年（1140年）には多宝塔が雷により焼失し、その後再建された多宝塔も、仁平元年（1151年）には再度火災で失われました。また、仁治3年（1242年）にも住僧による放火によりほぼ全焼する事態が発生しましたが、その後再興されました。行願寺は豊臣秀吉の都市計画によって天正18年（1590年）に寺町荒神口に移転し、その後またいくつかの移転を経て、現在の位置に定着しました。

近年では、地域猫への支援として知られる「猫の寺」としても有名で、寺院内に餌場や寝床を設けています。また、グッズを販売したり、募金活動を通じて猫の餌代を賄っています。

行願寺には幽霊絵馬にまつわる伝説もあります。それは江戸時代の末期、近くの質屋で働いていた子守女のお文が、子供に御詠歌を歌い聞かせ、その後の悲劇的な出来事を伝えるもので、彼女の幽霊が現れ真相を明かしたとされています。絵馬にはお文の遺品である手鏡がはめ込まれています。

寺院の境内には、本堂や愛染堂、寿老神神堂、鐘楼など、いくつかの文化財に指定されている建物が存在し、特に本堂と鐘楼は京都市指定有形文化財に指定されています。また、交通アクセスも良好で、丸太町駅や神宮丸太町駅から徒歩7分ほどで到達できる位置にあります。行願寺は、多くの人々にとって歴史的かつ信仰の拠り所として、今日も魅力的な存在であり続けています。

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