西光寺 (長野市)

西光寺（さいこうじ）

西光寺は、長野県長野市に位置する浄土宗の仏教寺院で、山号を苅萱山と称します。地元では「かるかや山」として親しまれており、バス停や交差点名にもその名が使われています。この寺は、絵解きを通じて苅萱伝説を伝える寺として知られています。

縁起と「苅萱伝説」

西光寺は、謡曲や説経節で知られる「苅萱伝説」の舞台の一つです。伝説によれば、苅萱道心（寂照坊等阿）は元は九州の国司で、俗名を加藤左衛門尉重氏といいました。世の無常を感じて出家し、高野山で仏道修行に励みます。苅萱の出家後に生まれた子、石童丸は、母とともに父を探し高野山へ向かいますが、女人禁制のため母は麓で待つことに。石童丸は父らしき僧を見つけますが、出家した苅萱は涙を呑み「父は死んだ」と告げます。下山後、母の死を知った石童丸は、再び高野山へ上り、父と確信しながらも34年間弟子として仕えました。

その後、苅萱は善光寺阿弥陀如来のお告げにより信濃に移り、善光寺近くに草庵を構えます。これが西光寺の始まりです。83歳で往生するまで、苅萱は日々善光寺に参籠しました。一人残された石童丸は、信濃に紫雲がたなびくのを見て西光寺へ向かい、刈萱塚を建立。父の死から2年後の同じ日に亡くなりました。西光寺には「苅萱親子地蔵」と呼ばれる地蔵菩薩像があり、それぞれ苅萱道心と石童丸が刻んだと伝えられています。また、寺には『苅萱道心石童丸御親子御絵伝』が所蔵されており、絵解きを通じてその物語を伝えています。

歴史

正治元年（1199年）、苅萱道心が善光寺如来の導きにより高野山を下り、この地に草庵を結んだのが西光寺の始まりです。建暦元年（1211年）には、越後から放免された親鸞聖人が善光寺を訪れ、兄弟弟子である苅萱道心の寺に50日間逗留しました。親鸞は日々名号を書き、苅萱道心とともに戸隠山に登り、阿弥陀三尊像を合作したと伝えられます。建保2年（1214年）、父の死を悟った石童丸は西光寺へ。父の遺志を継ぎ、2年後に入寂しました。永和2年（1376年）には、学圓上人が荒廃していた寺を復興し、本堂を建てました。明和6年（1769年）には、佐久郡の三氏が永代供養料として土地を寄進し、寺内での常念仏が再興。延宝5年（1677年）から安永8年（1779年）にかけては、10回ほど出開帳を行い、「苅萱道心石童丸御親子御絵伝」を用いて絵解きが行われました。宝永元年（1704年）には、小山田平太夫が西光寺を宿舎とし、善光寺本堂復興工事を開始。宝永4年（1707年）に本堂が完成し、後に善光寺仮堂が寄進され、西光寺の本堂となりました。明治4年（1871年）には、石坂周造が境内に日本初の石油精製所を設立。その後、1875年に移設しました。現在の本堂は、1875年に老朽化のため取り壊された後、開山堂を本堂として使用し、1938年に再建されたものです。

昭和40年代頃から、住職夫人が「御絵伝」の説明を始め、後に江戸中期作の「御絵伝」が発見され、修復後、2幅を合わせて絵解きが行われるようになりました。

伽藍

西光寺の境内には、以下の伽藍があります。

本堂: 本尊が祀られ、絵解きが行われます。
慈光門: 1979年に建立されました。
大師堂（園通殿）: 弘法大師を祀っています。
玉取稲荷神社: 苅萱稲荷社とも呼ばれる境内の鎮守です。
芭蕉塚: 松尾芭蕉の句碑があり、長野県内最古のものです。
一茶自筆の句碑: 小林一茶が西光寺を訪れた際に詠んだ句が刻まれています。
苅萱塚: 苅萱上人、石童丸、そして石童丸の母である千里御前の墓です。
石油会社社員の墓: 日本最初の石油会社である長野石炭油会社の社員の墓があります。
苅萱道心と石童丸像
小山田平太夫の墓
善光寺七福神巡り 第一番 寿老人: 寿老人の像があります。
信濃新四国八十八ヶ所 第七十六番札所の石碑
六角石憧地蔵尊
六地蔵尊
徳住上人 六字名号石: 念仏行者・徳本上人の弟子、徳住の文字が刻まれています。
針塚
大蛇、小蛇（おおにょう、こにょう）の塚（朝日山大蛇の塚）: 霊験あらたかな塚として知られています。この塚には、天明6年に木こりが殺した大蛇と、その妻である小蛇が弔われています。

宝物

西光寺には、以下の宝物が所蔵されています。

木造苅萱親子地蔵尊像（来迎地蔵尊像）: 長野市重要文化財に指定されています。鎌倉時代中期の作です。
百萬塔（木造百万塔）: 長野市重要文化財に指定されています。法隆寺から譲与されたものです。
苅萱道心石童丸御親子御絵伝（2幅）: 江戸前期と中期のものが所蔵されており、絵解きに使われます。
十王像: 本堂に安置されています。
伝親鸞聖人筆 不二の名号: 親鸞が逗留中に書いたと伝えられています。
子授け・安産の霊石: 苅萱道心が生まれたとされる霊石にちなみ、本堂に祀られています。
苅萱道心ご持仏 伽羅仏立像延命地蔵尊: 苅萱道心がいつも身辺に置いて拝んでいたとされる延命地蔵尊です。
かるかや山西光寺の韋駄天さま: 平安時代初期の公卿・小野篁の作とされる像です。

交通アクセス

長野駅（JR北陸新幹線など）から徒歩約7分。
善光寺行きバス「かるかや山前」下車、徒歩0分。

寺院周辺

西光寺の周辺には、以下の施設があります。

ながの東急百貨店
TOiGO
もんぜんぷら座
ぱてぃお大門
善光寺
JA長野県ビル

脚注

参考文献
『信州の文化シリーズ 寺と神社』1981年 信濃毎日新聞社
『探訪 信州の古寺 浄土教・日蓮宗』1996年 郷土出版社
関連項目
往生寺 ([[長野市)]] - こちらも刈萱伝説の残る、長野市の寺院。
外部リンク
絵解きの寺 かるかや山 西光寺 ホームページ

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