西風新都

西風新都（せいふうしんと）

広島市の佐伯区および安佐南区にまたがる広大なエリアを指す「西風新都」は、同市が推進する多心型都市づくりの重要な一角を担う都市拠点です。行政上の正式名称は時代と共に変遷し、「広島西部丘陵都市」から「西風新都」、現在は「ひろしま西風新都」とされていますが、地域住民や一般には親しみを込めて「西風」または「西風新都」と呼ばれています。この地域は、職住学術レクリエーションといった様々な都市機能を複合的に備えたニュータウンとして計画・整備が進められており、「広島市の副都心」と称されることもあります。

地理的特徴とアクセス

西風新都は、広島市の中心部である紙屋町・八丁堀エリア（太田川デルタ）から物理的に隔絶された場所に位置しています。都心との間には太田川放水路が流れ、さらに茶臼山を主峰とする丘陵地帯が横たわっているため、市街地が連続していません。かつては峠越えの道路や草津沼田道路のみが短絡路でしたが、1994年のアストラムライン開業や2001年の広島高速4号線（広島西風新都線）開通により、この丘陵地を迂回・貫通する新たな交通ルートが確保され、都心へのアクセスが飛躍的に向上しました。

主要な地点への距離は、広島市中心部まで約5～10km、広島港まで約15km、JR広島駅まで約12kmです。高速道路網も整備されており、山陽自動車道の五日市インターチェンジ、広島自動車道の西風新都インターチェンジ、広島高速4号線の沼田出入口などが利用可能です。これらのインターチェンジから西風新都の中心部へは車で短時間でアクセスできます。また、大塚駅バス停や広域公園前駅バス停からは、市内の路線バスに加え、遠隔地を結ぶ高速バスも多数発着しており、広域的な交通結節点としての機能も担っています。

開発の経緯と計画の見直し

西風新都の開発計画は、高度経済成長期の1971年に用地買収が開始されました。しかし、その後のオイルショックやインフレーションによる経済状況の激変を経て、用地買収は難航し1975年までかかりました。さらに、関連公共施設の整備遅れなどを理由に、1975年から1986年まで開発が凍結されるという異例の事態も経験しています。事業が本格的に着手されたのは、バブル景気絶頂期にあたる1989年（市制施行100周年）のことでした。

当初の計画では、「21世紀初頭に人口10万人」という目標が掲げられていましたが、その後の景気低迷や広島市の人口伸び率が想定を下回ったことなどから、計画通りに進捗しませんでした。これを受け、市は2006年から計画の見直しに着手し、2008年には新たな「ひろしま西風新都都市づくり推進プラン」を策定しました。これにより、開発スケジュールは「21世紀初頭」から「21世紀中頃」へと変更され、人口目標も「2020年度に6万人、21世紀中頃に8万人」へと下方修正されました。また、バブル期の発想から転換し、土地利用目的の緩和や機能配置の見直し、整備する施設の選択と集中などが図られています。現在、この地域の人口は約5万3千人です。

エリアと主な施設

西風新都は、行政区分としては佐伯区の石内地区、安佐南区の伴地区および大塚地区にまたがっています。各地区には、計画的に開発された多様な residential area が点在しています。

佐伯区の石内地区には、五月が丘や藤の木といった住宅団地があり、また石内北流通地区（インター流通パーク）や石内学研地区（広島ライセンスパーク「杜の街」）など、流通・研究開発機能を持つエリアも含まれます。安佐南区の伴地区は、セントラルシティこころやネオ・ハーモニータウン「若葉台」などの大規模住宅地のほか、伴東学研地区（テクノヒルズ）には教育・研究施設が集積しています。大塚地区は、学術機能が集まる大塚学研地区（アカデミック・リサーチパーク）に広島市立大学が、また近隣には広島修道大学のキャンパスがあります。大規模な住宅地であるA.CITYや花の季台もこの地区に含まれ、さらに広島広域公園や、近年開業した大型商業施設THE OUTLETS HIROSHIMAなども立地しています。

スポーツイベントの舞台

西風新都内にある広島広域公園第一球技場（旧称：広島ビッグアーチ）は、国際的・国内的な主要スポーツイベントの舞台ともなりました。1994年にはアジア最大のスポーツの祭典である「第12回アジア競技大会広島1994」のメイン会場として使用され、開会式・閉会式や陸上競技などが行われました。また、1996年には「ひろしま国体（第51回国民体育大会）」秋季大会の会場としても活用されています。

計画の遅れや見直しを経験しながらも、西風新都は広島市の新たな顔として、職・住・学・遊の機能を備えた都市空間の形成を目指し、発展を続けています。

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