調淡海

調淡海（つき の おうみ）

調淡海は、飛鳥時代から奈良時代にかけて活躍した貴族です。姓は初め首（おびと）でしたが、後に連（むらじ）に改めました。最終的な位階は正五位上に至っています。

出自

調氏は、百済系の渡来氏族であり、応神天皇の時代に帰化した百済人の努理使主（ぬりしのおみ）を祖とする氏族です。さらに遡ると、努理使主の祖先は中国周人にたどり着くとされています。調氏の氏の由来は、租税の一つである「調」の管理・徴収を担ったことに由来します。

経歴

壬申の乱での活躍

天武天皇元年（672年）に勃発した壬申の乱において、調淡海は大海人皇子（後の天武天皇）に従いました。大海人皇子が近江朝廷に対して反乱を起こすため、吉野宮を出発した際に、舎人として同行したことが記録されています。この乱における具体的な活動は詳しく伝えられていませんが、乱後には自身の回想録である『調連淡海日記』を著したとされています。

『調連淡海日記』について

『調連淡海日記』は、現在で言う日記とは異なり、回想録の形式であったと考えられています。残念ながら現存はしていませんが、その一部が『釈日本紀』に引用されており、当時の様子を垣間見ることができます。

文武天皇の行幸への随行

大宝元年（701年）には、文武天皇が紀伊国へ行幸した際、調淡海もこれに随行しました。この時の様子は、『万葉集』に収録された和歌から知ることができます。天皇の行幸に同行するということは、朝廷内で重要な役割を担っていたことを示唆しています。

官位の昇進と晩年

元明朝の和銅2年（709年）に従五位下に叙せられ、その後も順調に昇進を重ね、和銅6年（713年）には従五位上、元正朝の養老7年（723年）には正五位上に至りました。調淡海は長命を保ち、聖武朝まで朝廷に仕えました。神亀4年（727年）には、聖武天皇の皇子である基王の誕生を祝うため、五位以上の官位を持つ者に綿が与えられた際、累代の嫡子で五位以上の者に絁（あしぎぬ）10疋が加えられるという特典がありましたが、調淡海は高齢を理由に特別にこの特典を受けることが許されました。これは、彼の長年の功績と朝廷への貢献を高く評価した結果と言えるでしょう。

官歴

『続日本紀』に記載された調淡海の官歴は以下の通りです。

時期不詳：正六位上
和銅2年（709年）正月9日：従五位下
和銅6年（713年）4月23日：従五位上
養老7年（723年）正月10日：正五位上（越階）
* 神亀4年（727年）11月2日：絁10疋及び綿を賜る

まとめ

調淡海は、飛鳥時代から奈良時代にかけて、朝廷で重要な役割を果たした人物でした。百済系渡来氏族の出身でありながら、壬申の乱で功績を挙げ、文武天皇の行幸にも随行するなど、その存在感を示しました。長命を保ち、聖武天皇の時代まで朝廷に仕え、その功績から特別な恩恵も受けています。彼の生涯は、当時の貴族社会における活躍と、朝廷における貢献を物語るものと言えるでしょう。

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