赤ハゲ山

赤ハゲ山：絶景と歴史が織りなす島根県知夫村のシンボル

赤ハゲ山は、島根県隠岐郡知夫村に位置する標高325メートルの山で、知夫里島の最高峰です。その独特な名前は、山頂付近に木がほとんどなく、草原が広がっている様子から名付けられました。地元では「赤はげ山」「アカハゲ山」「赤禿山」とも呼ばれ、その美しい景観は「しま山100選」や「島の宝100景」にも選ばれています。

360度の絶景パノラマ

赤ハゲ山の頂上には展望台が設置されており、そこからは360度のパノラマビューが広がります。世界的にも珍しいとされるカルデラ湾（島前カルデラ）を囲む島前諸島をはじめ、天候に恵まれれば、島根半島や大山、三瓶山まで見渡すことができます。眼下には知夫里島の集落や田園風景が広がり、自然と人々の営みが調和した美しい景観を楽しむことができます。

地形と地質

知夫里島は、約630～530万年前の後期中新世に活動したカルデラ火山の一部であり、赤ハゲ山もその一部を形成しています。山の西側は日本海に面しており、海食崖が続く景勝地「知夫赤壁」では、鉄分の酸化作用により鮮やかな赤色を呈した粗面玄武岩を見ることができます。

水脈と自然環境

山頂付近には地下深くからの水脈の出口が複数あり、「ハゲラ水」「スゲザラ水」など、それぞれに名前が付けられています。これらの水は、古くから放牧されている牛馬の飲用水として利用されてきました。

赤ハゲ山までの道のりには、春には野ダイコンが咲き乱れ、その美しさは写真家にも絶賛されるほどです。また、ツルボやセンニチソウなど四季折々の野草が咲き、オキタンポポやオキノアザミといった隠岐諸島固有の植物も生育しています。北斜面下部には落葉広葉樹林が広がり、アキニレやクマノミズキなどが混生する豊かな自然が残されています。

歴史

赤ハゲ山の歴史は古く、元禄元年（1688年）編纂の地誌「増補隠州記」には「赤平山」として記録されています。山頂周辺からは黒曜石の石鏃などが発見されており、縄文時代または弥生時代のものと考えられています。

中世には、後醍醐天皇が隠岐に配流される際、赤ハゲ山の中腹にあった古寺「古海坊」と「仁夫里坊」に滞在したと伝えられています。天皇はそれぞれの寺に「松養寺」「願成寺」という名前を授けましたが、1504年の山火事で焼失しました。

現代に入り、1965年に赤ハゲ山牧道が新設され、1996年には展望台が完成しました。2021年には東京オリンピックの聖火リレーのゴール地点となり、多くの人々にその名を知られるようになりました。

産業と文化

赤ハゲ山は、古くから牛馬の放牧地として利用されてきました。山腹には湧き水が豊富で、牧畑の境界には「名垣」と呼ばれる石積みが築かれています。この名垣は、かつてこの地を支配していた名主たちの境界を示すもので、その一部は現在も残っており、「万里の長城」とも呼ばれています。

アクセス

赤ハゲ山へは、来居港から徒歩約50分～1時間、または車で約20分です。山頂には駐車場と公衆トイレが設置されています。

赤ハゲ山は、美しい景観と豊かな自然、そして歴史と文化が織りなす、知夫里島のシンボルです。ぜひ一度、その魅力を体験してみてください。

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