赤沢自然休養林

赤沢自然休養林は、長野県木曽郡上松町にある国有林とその周辺の公園地です。ここは「赤沢美林」とも呼ばれ、樹齢300年を超える木曽ヒノキの天然林が広がる美しい場所です。2001年には環境省の「かおり風景100選」に、2006年には林野庁の「森林セラピー基地」に選定されており、年間約10万人が訪れる人気の観光地となっています。

概要

赤沢自然休養林は、日本における森林浴発祥の地として知られています。かつては伊勢神宮の御神木や建築用材を産出する森林地であり、近世には尾張藩によって厳しく管理された留山でした。明治時代以降は皇室財産の御料林（のちに神宮備林）となり、戦後に国有林となりました。長年にわたり木材を供給していましたが、外材の輸入増加に伴い林業が衰退したため、全国初の自然休養林として公園に生まれ変わりました。

園内には8つの森林浴コースがあり、車椅子やベビーカーでも通行可能な「ふれあいの道」から、公園外周を巡る7〜10kmのコースまで、多様なコースが楽しめます。森林を構成する樹種は、木曽ヒノキを中心にサワラ、ネズコ、アスナロ、コウヤマキなどの針葉樹が分布しています。樹齢は平均300年と推定されていますが、これは江戸時代の文献や倒木の年輪調査に基づいて算出されました。近年では、この地域のヒノキ林がアスナロ林へと遷移していくことが危惧されています。

森林の標高は1,080〜1,558m、面積は約760haです。年間平均気温は8℃で、夏は涼しく過ごせますが、冬は内陸性気候特有の厳しい寒さに見舞われます。積雪は1mを超えることもあり、冬季間の散策は困難です。

園内には、かつて活躍した木曽[[森林鉄道]]の車両や資料が保存されています。1985年には、伊勢神宮の式年遷宮で御用材を運搬する様子がテレビ放映され話題となり、1987年からは週末などに乗車体験が可能となりました。2016年には林野庁の「木曽悠久の森」に指定され、200年後の森林形成を目指した保護管理が行われています。

開園期間

原則としてゴールデンウィークから11月初旬まで開園しています。

主な施設

赤沢森林交流センター：研修室兼イベントギャラリー、木工品販売所、車椅子トイレ、案内所
森林資料館：林業の資料や木曽五木についての解説を展示
森林鉄道：4月下旬から11月7日まで運行（軌道整備日を除く）
森林鉄道記念館：運行資料、客車、理髪車、貴賓車、蒸気機関車を展示
赤沢セラピー体験館：森林浴の健康増進や森林ガイドの案内・交流に利用
せせらぎの里赤沢：食事処（基本的に開園期間中の火曜日定休）
バーベキューハウス：要予約

園内は森林保護のため火気厳禁です。

森林浴コース

ふれあいの道：往復2.8km、約60分（木道で整備）
駒鳥コース：2.7km、約70分（森林セラピーロードを含む）
向山コース：2.0km、約60分
中立コース：2.1km、約60分
冷沢コース：3.3km、約110分
上赤沢コース：2.2km、約80分
渓流コース：1.5km、約40分
渓流コース（姫宮ルート）：3.5km、約120分

赤沢森林鉄道

赤沢自然休養林の奥部には、1,170m（往復約2.3km）の区間に森林鉄道が敷設されています。これは、かつて木曽地方で活躍した木曽[[森林鉄道]]が廃止された後、多くの人々の要望に応えて復活したものです。現在では、この休養林最大の人気アトラクションとなっています。

歴史

当初は、川の流れを利用した「木曽式伐木運材法」で木材を運搬していましたが、水力発電用のダム建設により川の利用が困難になったため、代替手段として森林鉄道が敷設されました。1916年に上松 - 赤沢間で小川線が開通し、スギの伐採が盛んな時期には、木曽郡全体に森林鉄道が網羅されました。しかし、トラック輸送が主流になると次第に衰退し、1975年に国内最後の森林鉄道が廃止されました。

復活

1985年、復活した森林鉄道が伊勢神宮の御用材を運搬したことをきっかけに、再運行を求める声が高まりました。上松町は観光客誘致の目的も重なり、1987年7月25日に乗車運行が開始されました。当初は夏休み期間のみの運行でしたが、現在は開園期間中の土日祝日にも運行されています。列車はディーゼル機関車が牽引しますが、かつて活躍した蒸気機関車、アメリカ製のボールドウィンも静態保存されています。

ボールドウィン

最盛期には10台を超えるボールドウィンが輸入され活躍しました。当初、1号機はアメリカから直接輸送される予定でしたが、第一次世界大戦の勃発により、オーストラリア経由で輸入された2号機が先に到着するという逸話があります。また、ボールドウィンの煙突は独特の形状をしていますが、これは第二次世界大戦中の燃料不足時に、石炭の代わりに小枝を燃料として使用するために試行錯誤した結果、現在の形になったものです。この独特な煙突は、世界でも木曽[[森林鉄道]]でしか見ることができません。

蒸気機関車は熱効率が悪いため、ディーゼル機関車への置き換えが進み、1960年には最後まで残っていた3両のボールドウィンも引退しました。そのうち1両は木曽に保存され、残りの2両はアメリカで動態保存されています。

交通アクセス

公共交通機関：JR中央本線上松駅からタクシー。開園期間中は、木曽福島駅・上松駅からおんたけ交通バスが運行。
マイカー：長野自動車道塩尻インターチェンジまたは中央自動車道中津川インターチェンジから国道19号経由で約90分。

駐車場は有料です（乗用車1日600円）。

脚注

詳細は木曽[[森林鉄道]]を参照

外部リンク

信州木曽・上松町の観光ガイド : ひのきの里上松町
赤沢自然休養林（中部森林管理局）

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