木曽森林鉄道

木曽森林鉄道

木曽森林鉄道は、長野県の木曽谷に存在した森林鉄道の総称です。林野庁長野営林局が管轄する国有林からの木材搬出を目的として敷設されました。最盛期には総延長400kmに達し、木曽谷の主要な輸送手段として重要な役割を果たしました。最盛期には、10の営林署がそれぞれ1～2線の森林鉄道を保有し、活発な木材輸送が行われていました。

路線

上松運輸営林署

小川森林鉄道
黒沢支線
王滝森林鉄道
白川支線
三浦変更線
瀬戸川森林鉄道
鯎川森林鉄道（大鹿停車場 - 鯎川停車場）

王滝営林署

鯎川森林鉄道（鯎川停車場 - 助六）
小俣森林鉄道
濁川森林鉄道
鈴ヶ沢森林鉄道
三浦本谷森林鉄道

歴史

1916年（大正5年）：小川森林鉄道竣工
1923年（大正12年）：王滝森林鉄道竣工
1966年（昭和41年）：小川森林鉄道廃止
1975年（昭和50年）：王滝森林鉄道廃止
1976年（昭和51年）：鯎川森林鉄道廃止

道路網の整備が進み、トラック輸送が主流となるにつれて、木曽森林鉄道は徐々に姿を消していきました。

車両

機関車

林野庁所属の車両には、機関車の種類（D:ディーゼル）、軸数（B:2軸）、空気ブレーキの有無（T:対応）を示す記号と、整備重量（トン数）を組み合わせた形式名が付与されました。非牽引車は、用途や車体サイズで区分され、A型、B型、C型とアルファベット順に分類されました。以下に主な車両を記します。

ボールドウィン製小型蒸気機関車：赤沢森林鉄道で動態保存。
加藤製作所製ガソリン機関車：主に開田線、小木曽森林鉄道、本線の入替用。
酒井工作所製A型ディーゼル機関車
酒井工作所製B型ディーゼル機関車
酒井工作所製B型ディーゼル機関車「やまばと」号用
酒井工作所製C1型ディーゼル機関車
酒井工作所製C4型ディーゼル機関車
酒井工作所製F4型ディーゼル機関車
協三工業製10tディーゼル機関車：北見営林署からの転属車。メンテナンスが難しく、主に代走として運用。
北陸重機工業製ディーゼル機関車：王滝本線末期に導入されたものと、復活運転用に新造されたものが存在。

この他にも、入替機やモーターカーなど、多数の車両が使用されていました。

客車

B型客車：運材台車を転用し製造された中～大型客車。北海道からの転属車や、アーチバー台車を装着した新製車も存在。
「やまばと」号用客車：王滝村所有の半鋼製客車。沿線児童の通学列車に使用され、クロスシートが設置。
C型客車：小型の2軸客車。
理髪車：移動理髪店として使用された。
貴賓車：皇太子（現上皇）が赤沢を訪れた際に利用。

貨車

運材台車：木曽森林鉄道の被牽引車の基本となる台車。貫通式空気ブレーキを装備。
土砂運搬車（ナベトロ）
タンク車
E型有蓋貨車：運材台車を改造した有蓋貨車。みやま号などの定期列車で生活物資輸送に使用。

事業用車

ロータリー車
除雪ヘッド
作業員輸送車
操重車（クレーン車）
貴賓客車
制動車（空気ブレーキ制御車、カブース）
非常車

その他、保線用車両など様々な事業用車両が使用されました。

保存車両

松原スポーツ公園：ディーゼル機関車、モーターカー、客車、運材台車などが動態保存。
赤沢森林鉄道：ボールドウィン製蒸気機関車が動態保存され、観光客向けの運行を実施。
藤崎森林公園：ディーゼル機関車、運材台車、ボギー客車が保存。

運行形態

本線ではタブレット閉塞式の閉塞区間が設けられていました。旅客列車は、当初は便乗という形でしたが、晩年には「みやま号」という定期列車が運行されました。観光客向けには「生命の保証はしない」という説明がなされていたというエピソードも残っています。その他、職員用の「おんたけ号」、通学用の「やまばと号」などが運行され、地域住民の生活を支えました。通学列車には安全対策のため半鋼化改造が施された専用車両が用いられました。

代替輸送

現在、小川森林鉄道の跡地の一部は、上松町営バス赤沢線が代替輸送を担っています。また、王滝森林鉄道の跡地は、木曽町生活交通システムや王滝村営バスが代替輸送を行っています。

復活運転

赤沢自然休養林では、観光客向けに復活運転が行われています。王滝村でも、松原スポーツ公園で動態保存に向けた活動が進められています。

ドキュメンタリー

新日本紀行「木曽森林鉄道〜長野〜」（1973年、NHK）

参考文献

西裕之「木曽谷の森林鉄道」（ネコ・パブリッシング、ISBN 4-7770-5181-1）
* 森下定一「思い出の木曽森林鉄道―山の暮らしを支えた60年」（地方小出版流通センター、ISBN 9784876634033）

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