司馬模

司馬模（しば も / しば ぼ）

司馬模（生年不詳 - 311年）は、西晋時代の皇族で、字は元表。司馬懿の四弟である司馬馗の孫にあたり、高密王司馬泰の四男として生まれた。東海王司馬越、新蔡王司馬騰、高密王司馬略らは兄弟にあたる。子に南陽王司馬保、范陽王司馬黎らがいる。

生涯

若い頃から学問を好み、琅邪王司馬睿や范陽王司馬虓と共に、宗室内で賢明な人物として知られていた。当初は平昌公に封じられ、恵帝の時代末期には冗従僕射に任じられ、その後太子庶子へと昇進、員外の散騎常侍となった。

永安元年（304年）7月、兄である東海王司馬越は、右衛将軍陳眕らと共に、皇太弟として政権を握っていた成都王司馬穎討伐を掲げて挙兵。恵帝を奉じて司馬穎の本拠地である鄴へ軍を進めた。しかし、皇帝軍は司馬穎配下の石超に敗北し、恵帝は捕らわれの身となる。司馬穎は事態を鎮めるため、皇族内で声望のあった司馬越とその兄弟である司馬騰・司馬略・司馬模を鄴に招き和解を図ろうとしたが、彼らはこれに応じなかった。

同年8月、東嬴公司馬騰は都督幽州諸軍事の王浚と結託し、司馬穎討伐の兵を起こした。司馬穎はこれに幾度も敗れ、恵帝を連れて洛陽へ逃走。11月には、河間王司馬顒配下の張方が恵帝を連れ去り、長安への遷都を強行した。同年12月、司馬越は司馬模を北中郎将・寧北将軍・都督冀州諸軍事に任じ、司馬穎に代わって鄴城を鎮守させた。これにより司馬模は冀州において強大な軍事力を掌握することとなった。

永興2年（305年）7月、司馬越が司馬顒と張方の討伐を掲げて州郡に檄文を送ると、司馬模も兄に協力した。

同年7月、司馬穎の旧将である公師藩が、司馬穎復権を掲げて趙・魏の地で挙兵すると、司馬模は大いに恐れ、配下の趙驤や馮嵩に迎撃を命じた。広平郡太守丁紹が軍を率いて救援に駆けつけ、范陽王司馬虓も兗州刺史の苟晞を救援に派遣し、協力して公師藩を撃破した。司馬模は丁紹の恩に報いるため、丁紹の出身地に功績を称える碑を建てた。

10月、司馬模は将軍宋冑を河橋に進軍させ、司馬顒配下の王闡・楼褒らを防がせた。

光熙元年（306年）、司馬虓が鮮卑の騎兵と平昌・博陵の兵に河橋を襲撃させると、宋冑も河橋を攻めた。楼褒が西に撤退すると、宋冑は騎馬で追撃し新安まで至った。この戦いにより、道路には数えきれないほどの死体が転がったという。司馬模は前鋒督護馮嵩に宋冑と合流させ、洛陽へ向けて進軍させた。司馬顒は呂朗らを滎陽に駐軍させてこれを阻ませようとしたが、呂朗は戦意を喪失して投降。こうして宋冑らは洛陽に入った。その後、宋冑は司馬越の傘下に入り、祁弘・司馬纂と共に長安攻略に向かい、恵帝奪還に貢献した。

同年8月、司馬模はこれらの功績により鎮東大将軍に昇進し、許昌を鎮守。9月には南陽王に封じられた。12月、司馬越は朝政の混乱を鎮めるため、詔書を用いて司馬顒を司徒に任じ、洛陽へ招聘した。司馬顒はこれに応じて洛陽へ向かったが、司馬模はこれを認めず、密かに配下の梁臣を派遣し、河南郡新安県の雍谷において司馬顒を絞殺。司馬顒の三人の息子も殺害した。

永嘉元年（307年）3月、司馬模は征西大将軍・都督秦雍梁益四州諸軍事に任じられ、開府を許された。これにより長安に入り、河間王司馬顒に代わって関中を鎮守することとなった。

永嘉2年（308年）2月、涼州刺史張軌が中風を患い会話が不自由となったため、息子の張茂が州事を代行するようになった。隴西内史張越は兄の酒泉郡太守張鎮と西平郡太守曹祛と共に涼州を奪い取ろうと画策し、長安へ使者を送り、司馬模へ「張軌は疾病により政務が不可能となりました。秦州刺史賈龕を涼州に派遣していただきたい」と伝えた。これにより賈龕が涼州刺史に任じられたものの、賈龕は赴任を拒否したため取りやめとなった。張鎮と曹祛は朝廷に上書し、改めて涼州刺史を派遣するよう要請すると、朝廷は侍中袁瑜を涼州刺史に任じた。これを聞いた治中楊澹は馬を駆けて長安へ至り、自らの耳を切り落とし皿の上に置いて、張軌が貶められていると司馬模へ訴えた。司馬模はこれを受けて、上表してこの人事を止めさせるよう朝廷へ求めた。懐帝は司馬模の上書に同意し、曹祛を処刑するよう命じた。これを受け、張軌は子の張寔に歩騎三万を与えて曹祛を討伐させ、さらに張越を敗走させた。これにより涼州は安定した。

永嘉3年（309年）7月、平陽人の劉芒蕩が漢王朝の末裔を自称し、胡族と結託して馬蘭山で挙兵した。支胡の五斗叟・郝索らが数千の兵を率いてこれに呼応し、新豊で劉芒蕩と合流した。同年9月、司馬模は乱を鎮圧するため配下の淳于定を派遣。淳于定は劉芒蕩らを撃破し、尽く誅殺した。

当時、関中は戦乱と飢饉により荒廃し、人々は互いに食い合うほどであり、さらに疾病が蔓延して盗賊が跋扈するようになっていた。司馬模の力量ではこれを抑えることができなかったため、銅人や鐘・鼎を鋳造して炊事道具を作り、これを食糧と交換しようと考えたが、反対意見が相次いだ。

司馬越は司馬模に関中の混乱を抑える能力がないと考え、洛陽に招いて司空に任じようと考え、中書監傅祗を派遣して関中の鎮守を交代させた。しかし、謀臣淳于定は司馬模に「関中は天府の国であり、覇王の地でもあります。今、綏撫できないことを理由に帰還したならば、声望を損なうことになります。また、公の兄弟は大事を起こすことを唱えており、並んで朝廷に在るのですぞ。もし強ければ専権の罪を有し、弱ければ人に制されるのです。これは公にとっての利とはいえないでしょう」と進言したため、司馬模はこれに同意し長安に留まった。

司馬模は世子の司馬保を平西中郎将、東羌校尉に推挙し、上邽に駐軍させた。しかし、秦州刺史裴苞が司馬保を拒んだため、司馬模は帳下都尉陳安に裴苞を攻めさせた。裴苞は敗れて安定に逃走し、安定郡太守賈疋を頼った。賈疋が裴苞を受け入れると、司馬模は軍司謝班を派遣して賈疋を攻撃した。そのため、賈疋は盧水へ逃走した。

永嘉5年（311年）5月、司馬模は太尉・大都督に昇進した。

同年6月、漢軍の攻勢により洛陽が陥落し、懐帝は捕らえられた（永嘉の乱）。7月、蒲坂を鎮守していた牙門将趙染は馮翊太守の地位を望んだが、司馬模はこれを拒否した。趙染はこれに怒り、配下の兵を引き連れて漢帝劉聡に帰順した。8月、劉聡は平西将軍趙染と安西将軍劉雅に騎兵2万を与え、司馬模のいる長安を攻撃させた。さらに、撫軍大将軍劉粲・龍驤大将軍劉曜が大軍を率いて後詰めとなった。司馬模は将軍呂毅に兵を与えて迎撃させたが、呂毅は潼関で趙染に敗れて戦死した。さらに漢軍は下邽に進軍し、涼州の将軍北宮純は長安から部下を率いて降伏してしまった。漢軍は勢いのままに長安を包囲し、司馬模は淳于定に出撃させたが撃退された。兵士は離散し食糧も枯渇したため、軍祭酒韋輔は「事は急を要します。一刻も早く降伏し、禍を免れるべきです」と進言。司馬模はこれに従い趙染に降伏した。趙染は傲慢な態度で司馬模の罪を数え上げ、劉粲のもとへ送還した。同年9月、劉粲は司馬模と子の范陽王司馬黎を殺害。司馬模の妃である劉夫人は胡人の張本に妻として与えられた。子の司馬保は南陽王の爵位を継いで漢に対抗した。また、長安もその後の賈疋の反撃によって奪還され、新たに擁立された愍帝を迎えることになった。

参考文献

『晋書』巻37 列伝第7
『資治通鑑』巻85、巻86

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