跡部氏

跡部氏の歴史

跡部氏（あとべし）は、甲斐源氏の庶流にあたる日本の氏族であり、小笠原氏の分流です。この家門は、信濃国の佐久郡跡部（現在の長野県佐久市）を本貫地とし、家族の歴史は伴野時長の次男、跡部長朝から始まります。跡部氏の歴史は、波乱に満ちたものであり、戦国時代においても重要な役割を果たしました。

跡部氏の入甲と力の強化

室町時代の甲斐国では、応永23年（1416年）に甲斐守護の武田信満が上杉禅秀の乱への加担で討伐され、守護が不在の状態に陥りました。この時、甲斐の有力者逸見有直は、足利持氏と手を組み、守護職を狙いました。しかし、鎌倉府と対立していた室町幕府は、武田信満の弟である武田信元を甲斐守護に任命し、信元を信濃国の小笠原政康のもとから戻す命令を出しました。このとき、跡部明海とその子景家が信元を補佐する形で守護代に任じられたと考えられています。

跡部氏は、信元の死後、武田家の内部抗争に巻き込まれます。信元の死後、武田信長が、彼の実子である伊豆千代丸を擁立し、跡部親子と敵対しました。永享5年（1433年）4月29日には、跡部親子が輪宝一揆の支持を受け、信長方を撃退しました。これにより、信長は甲斐を去り、鎌倉に出仕することになりました。跡部明海はその後、武田信重を甲斐守護として下向させるための工作をしましたが、その成果は不明で、信重の信任を得られなかったと記録されています。

跡部氏の専横と勢力拡大

跡部氏は、甲斐の政治において影響力を強めていきました。『鎌倉大草紙』の記述によると、信昌の幼少期から政務に介入しており、跡部景家は長禄2年（1458年）には安堵状を発給するなど、勢力を示しました。しかし、跡部氏に対する評価は賛否があり、若干の慎重論も存在します。

信昌との対立は甲斐全土に波及し、長禄元年（1457年）に甲府で小河原合戦が行われ、跡部氏が信昌方を圧倒したとされています。跡部明海が1464年に死去した後、信昌は諏訪氏と結び、夕狩沢合戦で跡部景家を破りました。この頃、甲斐国は幕府や鎌倉府の影響力から脱し、武田氏は国内における権威を確立するための努力をしました。

戦国時代の武田家臣団としての役割

跡部氏は、戦国時代には武田信玄・勝頼に仕える重臣層の一部となります。特に、跡部信秋や跡部行忠などの系統が存在し、彼らは武田家のために尽力しました。多くの者が、天正10年（1582年）に武田家が滅亡する際に殉死しました。

安土桃山時代から江戸時代

跡部勝忠も武田滅亡時に命を落としますが、その子である昌忠は、天正壬午の乱を経て徳川家に仕官しました。彼は徳川四奉行として甲斐の統治に関わり、その子孫は旗本として江戸時代を生きました。

また、跡部氏の末裔は武田遺臣として生き延び、名高い水戸藩の武田耕雲斎もその一人です。彼は、祖先の所業から名を改め、「武田」となりました。

結論

跡部氏は、日本の歴史の中で甲斐国の重要な家柄であり続け、戦国時代における武田家においてもその地位を保ちました。歴史の波乱を経て、氏族は江戸時代に至るまで続いた姿勢の中で、その名を残しています。

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