近畿日本鉄道の車両形式

近畿日本鉄道（近鉄）は、多様な路線網と車両構成を持つ大手私鉄です。本稿では、近鉄が保有する鉄道車両の形式、その分類方法、そして各形式の特色について解説します。

共通事項

近鉄の車両は、デザインや性能面で高い評価を受けており、鉄道友の会の「ブルーリボン賞」や「ローレル賞」のほか、「グッドデザイン賞」、「ブルネル賞」などを受賞した車両も多数存在します。

車内の製造銘板は、アクリル板製（1988年製まで）またはステンレス製（1989年製以降）で、製造年の表示はありません。これは京都市営地下鉄の車両も同様です。一方、車外の製造銘板には製造年が記載されています。

運転台は貫通式が基本ですが、特急車（一部を除く）や地下鉄直通仕様の通勤車は非貫通式です。特急車では、12000系以降の形式で幌カバーが採用されています。

標準軌線所属車両は、特急車と通勤車で電気機器と空気機器の配置が左右逆になっています。また、通勤車では所属路線ごとに細部が異なります。狭軌線所属車両も同様に機器配置が異なっていましたが、26000系以降の狭軌線用特急車では概ね共通化されています。

1972年から1975年にかけて、運転台機器の形状が新旧問わず統一されました。これにより、メーター類やATSなどの表示灯の位置が統一され、乗務員の誤操作防止に配慮されています。ただし、マスコンの仕様は路線によって異なります。

警笛は、電気笛と空気笛を併用しており、近鉄電車の特徴となっています。21000系以降の特急車では、音色の異なる電気笛も装備されています。

日本において、20m以上の長さで片側に4つの扉を備えた標準軌の通勤電車を運行しているのは、近鉄と京都市営地下鉄のみです。また、車両長はJRの通勤・近郊・一般型電車より長い21m級を標準としています。

近鉄の車掌スイッチは、一般的な鉄道会社とは異なり、下のボタンが「開」、上のボタンが「閉」となっています。近鉄線に乗り入れる阪神電気鉄道の車両はレバー式であるため、統一されていません。

メーカー

主制御装置のメーカーは路線ごとに異なり、かつては奈良・名古屋・南大阪線系統は日立製作所、標準軌特急車と大阪・京都線系統は三菱電機が中心でした。現在では、両社の製品が混在しています。南大阪線では、特急車を含めてすべて日立製です。

主電動機は原則として三菱製ですが、一部に日立製や東洋製のものを装備した系列も存在します。近年では80000系の一部で日立製主制御装置と主電動機の組み合わせが登場しています。

近鉄の車両は、原則としてグループ企業の近畿車輛（近車）製ですが、一部例外もあります。台車も基本的に近車が製造しており、シュリーレン式円筒案内軸箱支持機構を長年標準採用していました。近年では、近車独自開発のボルスタレス台車を採用しています。

形式付与基準

近鉄は、多岐にわたる車両構成のため、車両形式の付与基準が頻繁に改廃されています。現行の基準では、以下の要素で形式が決定されます。

A 記号
車種（制御電動車、電動車、制御車、付随車など）と構造（客車、荷物車、事業用車など）をカタカナで表します。
B 10000位
特急車で使用され、路線番号を示します。
C 1000位
路線系統を示します。
D 100位
系列番号を表します。偶数が基本で、制御車は系列番号に+100または-100されます。
E 10位
前系列に対し中規模な変更が行われた場合に+10されます。
F 1位
系列番号と形式番号は0、製造番号は1となります。

車両の種類

近鉄の車両は、大きく分けて特急・団体専用車両と一般車両に分類されます。

特急・団体専用車両

標準軌線シンボル特急車
50000系「しまかぜ」、80000系「ひのとり」、21000系・21020系「アーバンライナー」、23000系「伊勢志摩ライナー」、30000系「ビスタEX」、19200系「あをによし」など
標準軌線汎用特急車
12400系・12410系・12600系「サニーカー」、22000系・22600系「ACE」など
標準軌線団体専用車両
2013系「つどい」、15200系「新あおぞらⅡ」、15400系「かぎろひ」、20000系「楽」など
南大阪線・吉野線用
16000系・16010系、16400系・16600系「ACE」、26000系「さくらライナー」、16200系「青の交響曲」など

一般車両

近鉄では、特急用と団体用以外の車両は一般車両として分類されます。大阪・名古屋線系統では、急行用（トイレ付き、転換クロスシート）と通勤用（トイレなし、ロングシート）に用途が分かれています。

近鉄の一般車両は、製造時期によって様々な世代に分類できます。

試作高性能車（1954年以降）
初期高性能車（1957年以降）
統一規格車体（1961年以降）
ラインデリア車（1967年以降）
新造冷房車（1971年以降）
チョッパ省エネ車（1981年以降）
VVVF省エネ車（1984年以降）
シリーズ21（2000年 - 2008年）
* 前面八角形風車体（2024年以降）

第三軌条線区

けいはんな線（Osaka Metro中央線乗入用）では、7000系・7020系が使用されています。

事業用車両

モト75形、モト90形、モワ24系電気検測車「はかるくん」などが存在します。

過去の車両

近鉄には、数多くの歴史的な車両が存在しました。その中には、前身会社から引き継がれた車両も含まれます。

近鉄の車両形式は、その多様な歴史と技術革新の積み重ねを反映しています。各形式の特色を知ることで、近鉄の鉄道網をより深く理解することができるでしょう。

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