近鉄20000系電車

近畿日本鉄道20000系電車「楽」

20000系電車は、近畿日本鉄道（近鉄）が保有する団体専用列車で、「楽（RAKU）」の愛称で広く知られています。観光輸送を目的とした快適な移動空間を提供するため、様々な工夫が凝らされています。

概要

初代「あおぞら」として活躍した20100系の後継車両として、1990年11月23日に営業運転を開始しました。製造費は約6億5,000万円。愛称の「楽（RAKU）」は、Romantic Journey、Artistic Sophistication、Kind Hospitality、Unbelievable! の頭文字に由来し、書家・榊莫山氏によるロゴが車体に配されています。近鉄伝統の2階建車両を組み込んでいることから、「VISTA CAR」の名称も使用されています。

車体

車両限界を最大限に活用し、通路部分の屋根を高くすることで開放感を演出。大きな曲面ガラス窓や、冷暖房用の風洞を設けた柱も特徴です。上半分が黄色、下半分が白、その境目に濃い茶色のラインが入り、乗降扉は濃いオレンジ、車端部はグレーというカラーリングです。

先頭車両は2階建て構造で、運転席後部は前面展望席となっています。標識灯兼尾灯はLED式、前照灯は屋根上に2灯、排障器内にリトラクタブル式2灯を装備。屋根部にはサンルーフも設けられています。

中間車両は高床構造で、床下には主制御器と空調装置を搭載。集電装置は下枠交差式です。乗降扉は通勤車両と同様の両開き戸ですが、窓は小さめに設計されています。連結面には転落防止幌が設置されています。

主要機器・性能

主電動機は、標準軌特急車で採用されている三菱電機製MB-3127-B。主制御器は抵抗制御で、三菱電機ABFM-254-15MDHE電動カム軸式自動加速制御器を採用しています。制動装置は発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキを装備。台車は近畿車輛製のシュリーレン式空気ばね台車を使用しています。

補助電源装置は静止形インバータ+DC-DCコンバータ、空調装置はヒートポンプ式と集約分散式を組み合わせて搭載。起動加速度は2.5km/h/s、最高速度は120km/hです。

編成

4両編成で、大阪側からク20100形 (Tc) - モ20200形 (M) - モ20250形 (M) - ク20150形 (Tc)という構成です。編成定員は260名です。

車内設備

先頭車はダブルデッカー構造で、階上と階下に分かれています。階上席は42名、階下席は14名が定員です。階下へは螺旋階段でアクセスできます。中間車はハイデッカー構造で、天井は間接照明方式となっています。座席は転換クロスシートで、一部に補助席を設置。先頭車車端部にはサロンコーナーが設けられています。トイレは和式と洋式が各1か所設置されています。

リニューアル

2020年3月よりリニューアル工事が実施され、「地のにぎわい」をデザインコンセプトに、沿線地域の魅力を表現した車両へと生まれ変わりました。車体塗装は「漆メタリック」に変更され、内装も大幅にリニューアル。展望席はフリースペース「楽VISTAスポット」となり、階下席は多目的スペースとして活用されています。座席スペースも刷新され、より快適な空間となりました。トイレも改修され、車椅子対応トイレが新設されました。各座席にはコンセントが設置され、車内フリーWi-Fiも利用可能です。

その他

20000系は、団体専用列車として高額な貸切料金が設定されていますが、特急料金は不要です。団体旅行やイベントなどに最適な移動手段として、多くの人に利用されています。

参考資料

鉄道ファン No. 358、交友社、1991年2月
鉄道ジャーナル No. 292、鉄道ジャーナル社、1991年2月
鉄道ファン No. 715、交友社、2020年11月
鉄道ファン No. 716、交友社、2020年12月

関連リンク

* 鉄路の名優「20000系　楽 (RAKU) 」（近鉄公式サイト）

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