迷歯亜綱

迷歯亜綱 (Labyrinthodontia)

迷歯亜綱は、デボン紀の終わりから始まった陸上生物群の一つで、石炭紀、ペルム紀、三畳紀にかけて繁栄したが、その後白亜紀前期まで存続した両生類の一群です。この分類は、その名の通り特徴的な「迷路歯」によって知られています。この迷路歯は、その表面エナメル質が内部で複雑に折り込まれており、その断面が迷路のようになっています。これは古代の肉鰭魚が持っていた形質を受け継いでいます。

特徴

迷歯亜綱に属する生物は、通常次のような特徴を持っています。

• - 迷路歯: この顎骨の歯は、口蓋前部の平滑な部分にも見られ、ただ並んでいるだけではなく、特殊な配置をしています。
• - 堅固な頭骨: 頭骨は極めて強固で、頭頂部には松果体孔があり、耳切痕という鼓膜が張られた陥凹があります。
• - 舌顎骨の変化: 魚類の鰓弓の一部として存在した舌顎骨が、耳への音の振動を伝達する細長い「鐙骨」に進化しています。
• - 発達した四肢と肢帯: 陸上での生活に適応するために、四肢と肢帯が優れた構造を持つよう進化しました。
• - 特有な椎骨の構造: 椎骨は側椎心、間椎心、神経弓の三つの要素から成り、頑丈に関節することで体を支えることが可能です。

多くの種は幼生期に外鰓を持ち、また側線器官も見られます。

下位分類

古典的な分類では迷歯亜綱は以下の三目に分けられますが、近年ではこれらが異なる系統であると考えられています。
1. イクチオステガ目 (Ichthyostegalia): もっとも原始的なグループであり、デボン紀後期から石炭紀初期まで存在しました。
2. 分椎目 (Temnospondyli): 石炭紀から白亜紀前期まで最も多様化した目であり、カエルや現生両生類の祖先とされる一群です。
3. 炭竜目 (Anthracosauria): このグループは、椎骨の側椎心が大きくなる傾向があり、爬虫類との関連が指摘されています。

進化の過程

デボン紀には、温暖な気候と多様な陸上植物の出現により、陸上無脊椎動物が豊かに繁栄します。この時期、イクチオステガ目に属する種が台頭し、ほとんどは水生動物でしたが幼体期には一時的に陸に上がることができたと考えられています。

石炭紀では、環境が温暖かつ水域が豊富であったため、五指を持つ強靭な四肢や頑丈な脊椎を持つ分椎目や炭竜目が登場し、陸上生活への適応が進みました。特にペデルペスがその代表的な種です。さらに、彌生期には気候が寒冷化し、両生類は特に赤道地域で繁栄しました。

ペルム紀には、パンゲア大陸が形成され、地形や気候が多様化します。この時期は分椎目が大繁栄し、さらに多くの陸上動物に適応した種が誕生しますが、末期に氷河期が訪れ、最大の大絶滅事件が起こります。三畳紀に入ると、炭竜目はごく少数が残るのみとなり、分椎目は水生生物に戻ります。

ジュラ紀から白亜紀にかけては、両生類は次第に絶滅へ向かい、分椎目や炭竜目はその系譜を閉じることとなります。両生類の進化の道のりは、地球の環境変化と生態的なプレッシャーに大きく影響されており、彼らの多様性と発展は、長い歴史を持つ生態系の中で重要な要素となっています。

もう一度検索