造宮省

造宮省の概要と歴史的背景

造宮省は、日本の古代における宮城の建設と修理を専門に扱う官庁であり、その長官は造宮卿と呼ばれています。この機関は、大宝元年（701年）に設置された造宮職から発展し、和銅元年（708年）に省に昇格しました。造宮省は日本の歴史の中で、重要な政治的役割を果たしました。その歴史的背景を詳しく見ていきましょう。

造宮職の発展

造宮省の起源は、律令制が確立される前に存在した造宮官にあります。この官は設立時期が不明ですが、大宝元年の大宝律令の制定直前に造宮職に名称を変更しました。特に、701年9月4日という日にちが指摘されており、この日を境に官職が改組されました。

和銅元年においては、平城京への遷都が検討され始めたことから、造宮職はさらなる重要性を帯びることになります。708年4月8日、造宮省が設立され、初代造宮卿として大伴手拍が任命されました。このことは、当時の首都政策が建設事業に大きく依存していたことを示しています。

造宮卿の役割

造宮卿は、八省の卿の中で最も権限が高い中務卿が正四位上であるのに対し、造宮卿は従二位という高い官位に位置付けられました。このような地位の上昇は、宮殿の建設に対する重視を反映しており、造宮卿には多くの人々を動員して工事を監督する責任が課せられていました。彼らの任命には大伴氏などの軍事を司る著名な氏族が選ばれることが多く、これは新しい宮殿の構築が国家の重層的な政策の一部であったことを示しています。

また、造宮省の下には、史生（歴史を記す人々）、将領、算師（計算を行う者）、工（工事に従事する者たち）などの四等官が設置されており、造営にかかる様々な業務を円滑に進める体制が整っていました。なお、宮殿以外の都の整備や離宮の造営に関しては、別の官舎である令外官司が設立されていました。

造宮省の廃止と再編成

しかし、758年に桓武天皇による大規模な行政改革が行われ、長岡京への遷都に向けた組織の再編成の一環として、延暦元年（782年）4月11日、造宮省は廃止されてしまいました。その後、平安京遷都の際には、藤原小黒麻呂が長官として再び造宮職が復興しますが、延暦24年（805年）には藤原緒嗣と菅野真道による「徳政相論」の影響で平安京の造営は中止され、再び造宮職は廃止となります。これらの出来事は、時代の変化に応じた行政機構の必要性を如実に示しています。

まとめ

造宮省は、日本の古代の行政制度及び宮城の建設に関する重要な機関でした。その存在は、国家の発展に寄与するだけでなく、宮殿の建設に対する文化的・政治的な側面も持ち合わせていました。その長い歴史を通じて、造宮省は様々な変遷を辿りましたが、最終的には時代のニーズに応じた進化が求められることになります。

もう一度検索