進物番

進物番（しんもつばん）についての詳細

進物番は江戸時代の幕府における特別な役職であり、主に表御殿で将軍が出席する重要な儀式の際に、大名や旗本からの進物（献上品）の取り扱いを行いました。この職務に就く者は、献上品の周旋及び配置を行うことが求められました。江戸幕府の運営において、進物は重視され、これを管理する進物番の役割は非常に重要でした。

進物番の起源は、寛永9年（1632年）に遡ります。この年、小姓の島田直次の主導により、書院番と小姓組から選ばれた30人が進物番の初代となりました。彼らは両番の番士としての役割を免除され、殿中での祗候を命じられたのです。進物番という役職は、両番に属している者の中から選抜され、在職のまま任命される形をとっていました。

進物番はその地位において布衣（六位相当）の役職でありましたが、正月や特別な儀式においては、武家官位の従五位下にあたる者が着る大紋を着用することが許されました。このため、彼らは「御雇諸大夫」や「仮諸大夫」と呼ばれることもあります。特に進物番が着用する大紋長袴は、個人の持ち物ではなく、儀式の際に幕府の納戸から貸与されるものでした。

儀式における進物番の行動は、奏者番の指揮および目付の指示に従う必要がありました。そのため、事前には相当の練習が求められ、容貌や態度も重視されました。進物番に任命されることは名誉とされ、多くの旗本がこの役職を通じてキャリアを積み上げていきました。

実際、進物番からは徒頭や小十人頭、さらには中奥小姓といった布衣役や諸大夫役に進むことができ、出世の重要なステップと位置づけられていました。この職を経験した著名な旗本の中には、長谷川宣以（先手弓頭・火付盗賊改役）、永井尚志（若年寄）、小栗忠順（勘定奉行）、滝川具挙（大目付）などが名を連ねています。

進物番は、ただの役職ではなく、その地位に就くこと自体が名誉であり、また多くの著名人がこの職を通してさらなる高い地位へと上り詰めていったことから、江戸幕府においても特別な存在感を持つ役職であったと言えます。

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