遵仁法親王

遵仁法親王（じゅんにんほっしんのう）

遵仁法親王は、江戸時代中期に生きた皇族であり、僧侶でもありました。享保21年（1736年）に中御門天皇の第六皇子として誕生し、幼名は政宮（まさのみや）と称しました。母は五条為範の娘である五条寛子です。

生涯

元文3年（1738年）に仁和寺の門跡となることが決定しますが、すぐに出家はせず、後日改めて入寺得度することとされました。しかし、寛保3年（1742年）に九条稙基と鷹司基輝が相次いで亡くなり、両家ともに後継者問題が浮上したことで、政宮の運命は大きく変わります。

関白であった一条兼香は、桜町天皇に対し、政宮を養子として摂家を相続させることを希望しました。まず、九条家の後継者候補として、稙基の弟である二条宗基や、叔父である随心院門跡の尭厳が挙がりました。しかし、兼香は二条家からの復帰となる宗基や、高齢の尭厳の相続に難色を示し、政宮の相続を強く主張しました。また、宗基を九条家に戻す代わりに、政宮を宗基の養子として二条家を継がせるという案も持ち上がりました。

当時、政宮はまだ出家していなかったため、摂家の後継者として問題ないという認識が、兼香ら他の摂家にはありました。しかし、桜町天皇は政宮が病弱であることを理由に反対し、稙基・宗基の母である信受院も尭厳の相続を望みました。さらに、門跡を失う仁和寺もこの案に強く反発しました。最終的に、幕府の判断に委ねられた結果、尭厳が九条家を相続することになりました（九条尚実）。

次に、鷹司家の後継者問題が発生した際も、兼香は再び政宮の相続を主張しましたが、天皇の反対は変わりませんでした。武家伝奏の葉室頼胤も、一度否定された政宮の相続を再び持ち出すことを懸念しました。天皇は鷹司家から養子を迎えることを検討し、最終的には閑院宮家から淳宮を迎えることで決着しました（鷹司輔平）。

長坂良宏は、桜町天皇が皇族が摂家を継ぐことを望ましくないと考えていたこと、一条兼香は僧侶の還俗や、摂家よりも下位の家柄からの養子縁組を避けたかったことを指摘しています。

摂家相続の話がなくなった政宮は、延享3年（1746年）12月に元服し、親王宣下を受けました。翌延享4年（1747年）2月には仁和寺に入り、大僧正隆幸のもとで出家しますが、同年4月に病に倒れ、一品親王に叙せられたものの、12歳という若さで亡くなりました。法号は三摩耶心院（さんまやしんいん）といいます。

このように、遵仁法親王は、若くしてその生涯を終えましたが、当時の皇室や摂家、幕府の複雑な関係の中で、翻弄された人物であったと言えるでしょう。

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