邳州市

邳州市（ひしゅうし）

邳州市は、中華人民共和国江蘇省徐州市に位置する県級市です。古くは下邳（かひ）と呼ばれ、その歴史は古く、多くの変遷を経て現在に至ります。1992年に県級市に昇格しました。

地理

邳州市は、徐州市街地の東に位置し、北は山東省棗荘市に接しています。江蘇省、山東省、河南省、安徽省の4つの省が交わる場所に位置し、徐州・連雲港都市圏の中央に位置しています。東西を結ぶ隴海鉄道と南北を結ぶ京杭大運河が交差する交通の要衝であり、江蘇省北部・山東省南部の水陸交通の要となっています。

地形的には、華北平原の東南部、黄河と淮河の沖積平野である黄淮平原に位置しています。黄河の旧河道が市域を通っており、北には微山湖、南には駱馬湖と大きな湖に囲まれています。北側の山東省棗荘市台児荘区との境界は京杭運河となっています。

歴史

戦国時代から楚漢戦争にかけて、下邳は中原の南に位置する要衝として、各国の激しい争奪戦の舞台となりました。特に隣接する彭城（現在の徐州市中心部）は、宋や楚が国都としたり、項羽が本拠地を置いたりと、歴史的に重要な場所でした。下邳もその影響を受け、戦火に見舞われました。

また、下邳は、後に劉邦の軍師となる張良が、陳勝・呉広の乱が起こるまで隠れ住んでいた地でもあります。詩人の李白もこの地を訪れ、張良の故事を基に詩を作っています。

前漢時代には、下邳は楚国に属し、彭城と共に経済的な中心地として栄えました。しかし、三国時代には再び多くの武将が争う地となりました。初期の劉備の本拠地であり、呂布や関羽が守っていた都城として、三国志演義などによく登場します。淮河流域で中国の南北の境に位置する下邳は、宋と金の戦争など、数々の戦いの舞台となりました。一方で、経済力や文化の蓄積を背景に、多くの学者や文人を輩出しています。

近代に入り、中華民国建国と同時に邳県と改称されました。隴海線が通り、東西南北の鉄道が交差する徐州の近くであったため、再び戦乱の地となりました。日中戦争では、徐州会戦の際に台児荘（現在の山東省棗荘市の一部）を巡り、激戦が繰り広げられました。邳県は、国民党軍への補給拠点となりましたが、日本軍は台児荘を攻略することができませんでした。その後、国共内戦でも邳県を巡る争奪戦が繰り返されました。共産党軍は、この地を拠点にゲリラ活動を展開しました。

三国志と下邳

三国時代における下邳は、以下のような逸話で知られています。

下邳は、当初陶謙の家臣であった曹豹の都城でした。陶謙の死後、劉備が徐州を譲り受けた際に、曹豹を部下としました。しかし、劉備を頼ってきた呂布は、劉備が留守の間隙を突いて曹豹と下邳を乗っ取りました。呂布は徐州刺史を自称し、劉備を小沛の城に追い出しました。その後、曹操と劉備の連合軍に攻められた際、呂布は陳登の助言により、妻子や金銀兵糧を下邳に移しました。しかしその後、陳登が裏切り、呂布は下邳で籠城を余儀なくされました。3ヶ月の包囲と水攻めの末、呂布軍の士気は低下し、部下の裏切りにより、曹操・劉備連合軍に捕えられ、処刑されました（下邳の戦い）。

劉備は、曹操によって左将軍となり徐州を与えられました。劉備は小沛を引き続き本拠とし、下邳を関羽に守らせました。しかし、劉備と曹操は決裂し、曹操は徐州に攻め込み、劉備軍は四散しました。下邳を守っていた関羽は、曹操の策にはまり降伏しましたが、捕虜となっています。

行政区画

邳州市は、4つの街道と21の鎮を管轄しています。

街道: 東湖街道、運河街道、戴圩街道、砲車街道
鎮: 邳城鎮、官湖鎮、四戸鎮、宿羊山鎮、八義集鎮、土山鎮、碾荘鎮、港上鎮、鄒荘鎮、占城鎮、新河鎮、八路鎮、鉄富鎮、岔河鎮、陳楼鎮、邢楼鎮、戴荘鎮、車輻山鎮、燕子埠鎮、趙墩鎮、議堂鎮

人物

邳の地からは、数多くの著名な歴史上の人物が輩出されています。夏朝の奚仲や、戦国時代に邳に封じられた斉の宰相・鄒忌などがその代表です。秦朝の頃には、黄石公がこの地にゆかりのある張良に書を贈ったと伝えられています。また、辛亥革命に参加した徐国泰や、革命文学『紅岩』に登場する小蘿蔔頭（宋振中）とその両親も邳州の出身です。

名物・名産

邳州には、「柳琴戯」という独特の民間芸能があります。これは、「京西大鼓」に似たもので、かつては盛んに演じられていました。また、銀杏や無花果が特産品として知られ、特に銀杏は様々な加工品が作られています。にんにくも海外に輸出されています。

関連項目

* 中国の歴史

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