酒井重澄

酒井重澄：生実藩主、栄光と失墜の生涯

酒井重澄は、慶長12年（1607年）に飛騨国で生まれました。彼は、飛騨高山藩の2代藩主である金森可重の七男としてこの世に生を受けました。

元和8年（1622年）、16歳になった重澄は、徳川秀忠に初めて拝謁します。その後、徳川家光の小姓として仕え、家光から特別な寵愛を受けました。家光の命により酒井忠勝の家名を名乗ることを許され、下総国生実に2万5000石（または3万石とも）を与えられ、大名としての地位を確立しました。

元和年間末期頃には、堀田正盛とともに家光の「一双の寵臣」と称されるほど信頼が厚かったと伝えられています。『徳川実紀』によれば、堀田正盛と酒井重澄の間に官位や知行で優劣が生じないよう、正盛が3万石を与えられた際、重澄にも同様に3万石が与えられたと記されています（『藩翰譜』を典拠とする）。ただし、『寛政譜』には、重澄が3万石を与えられたという記述はなく、正盛が3万石を超えるのは重澄の改易後となっています。

しかし、重澄は病気を理由に出仕を怠り、屋敷で静養しているはずにもかかわらず4人の子をもうけたことが発覚し、家光の怒りを買い、寛永10年（1633年）5月13日に改易という処分を受けました。その理由は勤務怠慢と不行跡であり、本来は切腹に相当する罪でしたが、病弱であったことが考慮され、罪一等減じられました。

改易後、重澄は備後福山藩の水野勝成に預けられる身となりました。寛永19年（1642年）に36歳で自害。伝えられるところによると、堀田正盛が佐倉城主になったという知らせを聞き、自身の境遇を恥じて食を絶ち、自らの命を絶ったとされています（『藩翰譜』）。

嫡男である重知（牛之助、権兵衛）も、重澄の事件に連座し、伯父にあたる飛騨高山藩の3代藩主・金森重頼に預けられました。しかし、承応2年（1653年）に罪を許され、翌年には2000俵を与えられ、子孫は2000石の旗本として存続しました。

酒井重澄が登場する作品

漫画
今井ムジイ『将軍の血』KADOKAWA

参考資料

* 田中貢太郎 編『飛騨国大野郡史 上巻』升重書店、1925年。

もう一度検索