鉄道員 (小説)

鉄道員（ぽっぽや）

浅田次郎の短編小説『鉄道員』（ぽっぽや）は、1995年に『小説すばる』に掲載され、後に同名の短編集として1997年に刊行されました。廃線を間近に控えたローカル線の駅長と、彼を巡る人々の心温まる交流を描いた物語です。本記事では、小説のあらすじ、書籍情報に加え、映画、ドラマ、漫画などのメディア展開についても解説します。

概要

物語の舞台は、北海道の架空のローカル線「幌舞線」。主人公の佐藤乙松は、終着駅である幌舞駅の駅長として、長年鉄道員一筋に生きてきました。しかし、路線は廃止を迎え、乙松自身も定年退職の年を迎えます。彼は、幼い娘と妻を亡くし、孤独な日々を送っていましたが、ある雪の日に、赤いランドセルを背負った少女が現れたことから、彼の人生に奇跡が訪れます。

この作品は、第16回日本冒険小説協会大賞特別賞を受賞。短編集は第117回直木賞を受賞し、140万部を超えるベストセラーとなりました。1999年には降旗康男監督、高倉健主演で映画化され、第23回日本アカデミー賞で最優秀作品賞、最優秀主演男優賞など主要部門を独占しました。

浅田次郎は、散歩中に物語のアイデアが突然頭に浮かんだと語っています。

あらすじ

佐藤乙松は、道央にある幌舞線の終着駅・幌舞駅の駅長。鉄道員として生きてきた彼は、定年と路線の廃止を目前にしています。かつて彼は、生まれたばかりの娘を病気で、妻をその後に亡くし、一人で駅を守り続けていました。

ある年の正月、乙松の元に赤いランドセルを背負った少女が現れ、駅に人形を忘れていきます。この出来事が、乙松にとって忘れられない出来事の始まりとなります。

書籍情報

鉄道員（ぽっぽや）（集英社、1997年4月、ISBN 4087742628）
鉄道員（ぽっぽや）（集英社文庫、2000年3月、ISBN 4087471713）
鉄道員、ラブ・レター（集英社CDブック、1998年2月、ISBN 408901140X）
鉄道員（ぽっぽや）（集英社みらい文庫、2013年12月、ISBN 408321189X） - ラジオドラマ収録

ラジオドラマ

1997年10月17日、文化放送『浅田次郎ワールド・鉄道員「ラブ・レター」』として放送（出演：下條アトム、菅野美穂、松田洋治ほか）
1997年11月23日 - 12月14日、NHKラジオ第1放送「日曜名作座」枠にて『浅田次郎短編集＂鉄道員（ぽっぽや）＂』として4編が放送（出演：森繁久彌、加藤道子）

映画

1999年6月5日に公開された映画版は、降旗康男が監督を務め、高倉健が主演を務めました。広末涼子、志村けん、大竹しのぶなど豪華キャストが出演し、坂本龍一が主題歌を担当しました。

映画は、原作の持つ温かさや幻想的な雰囲気を忠実に再現し、炭鉱の町として栄えた幌舞の歴史や人々の暮らしを、乙松の回想を通して描いています。

キャスト

佐藤乙松：高倉健
佐藤静枝：大竹しのぶ
三姉妹：広末涼子
杉浦仙次：小林稔侍
杉浦明子：田中好子
吉岡肇：志村けん
加藤ムネ：奈良岡朋子
飯田：中本賢

スタッフ

監督：降旗康男
脚本：岩間芳樹、降旗康男
音楽：国吉良一
撮影：木村大作

主題歌

鉄道員（TETSUDOIN） - 歌：坂本美雨

挿入歌

鉄道員の歌
テネシーワルツ
サウスポー
夢は夜ひらく

受賞歴

第23回日本アカデミー賞：最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞など
第73回キネマ旬報ベスト・テン：読者選出日本映画ベスト・テン第1位、主演男優賞
第54回毎日映画コンクール：日本映画大賞、日本映画ファン賞、女優主演賞
第42回ブルーリボン賞：主演男優賞
第12回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞：作品賞、主演男優賞、新人賞

テレビドラマ

2002年1月1日には、テレビ朝日系列で新春スペシャルドラマ「鉄道員/青春編」が放送されました。1964年の幌舞を舞台に、乙松と静枝の出会いから、原作と同じ結末までを描いています。

キャスト

佐藤乙松：岸谷五朗
静枝：飯島直子
鈴木仙次：石黒賢
鈴木初代：渡辺満里奈
佐藤国松：いかりや長介

スタッフ

脚本：松原敏春
監督：出目昌伸

漫画

映画公開後、ながやす巧によって漫画化されました。キャラクターデザインは映画版とは異なり、オリジナルとなっています。原作に忠実なストーリー展開に加え、端役だった若手運転士・早川の役割が大きくなっているのが特徴です。

舞台

2000年と2013年に舞台化されています。2000年版では藤田まことが主演を務め、2013年版では勝野洋が主演を務めました。

ロケ地の現状

映画版の幌舞駅として使用された幾寅駅は、2016年の台風被害により不通となり、2024年3月31日をもって廃駅となりました。

関連作品

駅 STATION：高倉健、降旗康男、木村大作のトリオによる作品。
* すずらん：NHK連続テレビ小説。炭鉱で栄えた駅を舞台にした物語。

まとめ

『鉄道員』（ぽっぽや）は、鉄道員として生きた男の人生と、彼を支えた人々の愛情を描いた感動的な物語です。小説、映画、ドラマ、漫画、舞台と様々な形で展開され、多くの人々に感動を与え続けています。

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