日根野弘就

日根野弘就（ひねの ひろなり）

生涯

日根野弘就は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、美濃本田城主を務めました。その出自については諸説ありますが、『寛永諸家系図伝』や『寛政重修諸家譜』では日根野九郎左衛門尉の子とされています。

斎藤家臣時代

当初は斎藤道三に仕え、その子である義龍の代に重用され頭角を現しました。弘治元年（1555年）には、義龍の命により異母弟である孫四郎、喜平次兄弟を稲葉山城内で斬殺するという血なまぐさい事件に関与しています。義龍が斎藤氏の実権を握ると、弘就は重臣として活躍し、斎藤龍興の代にも引き続き用いられました。永禄年間には、氏家直元、安藤守就、竹腰尚光らと共に連署で書状を発給するなど、斎藤家において重要な役割を果たしていたことが伺えます。

しかし、安藤ら西美濃三人衆との不仲が表面化し、彼らが織田家と内通している疑いを持った弘就は、浅井賢政（後の長政）に要請し、西美濃三人衆の領地への出兵を促しました。永禄7年（1564年）には、安藤守就とその娘婿である竹中重治による稲葉山城占拠事件により、主君である龍興と共に城を退去させられています。その後、弘就は延永姓を名乗り、延永備中守弘就と称するようになりました。

織田家への抵抗を続けましたが、永禄10年（1567年）に稲葉山城が織田家の手に落ちると、斎藤家は滅亡。弘就は浪人となります。

流浪の時代

斎藤家滅亡後、弘就は一族と共に今川氏真に仕えましたが、徳川家康との戦いで家臣を失い、自身も敗北を喫します。今川氏が没落すると、近江へ向かい、土豪と関係を築き、浅井長政に仕えました。しかし、浅井家を離れ、長島一向一揆に参加。新砦の守備につきます。長島一向一揆では、大湊から足弱衆を運ぶなど、一揆勢力の一翼を担いましたが、天正2年（1574年）に織田軍によって一揆が鎮圧されると、長島を脱出しました。

その後、弘就は信長の元に降伏し、織田家臣となります。

織田家臣時代

織田家では馬廻として仕え、天正3年（1575年）の越前一向一揆討伐に参加。日根野隊は白木峠を越えて穴馬谷に侵入し、一揆勢力を撃破しました。天正6年（1578年）の有岡城の戦いにも参陣しています。天正8年（1580年）には、弟の盛就をはじめとする日根野一門が安土に屋敷を与えられ、信長の馬廻として取り立てられました。本能寺の変の際には、京都にいましたが、事態を静観。美濃の佐藤秀方と書状を交わし、今後の対応を協議しました。

豊臣家臣時代

天正11年（1583年）には、池田恒興と共に美濃の瑞竜寺に禁制を発行しており、賤ヶ岳の戦い後に美濃に領地を与えられたと考えられています。天正12年（1584年）の小牧・長久手の戦いでは、二重堀砦の守備を任され、徳川軍と激戦を繰り広げました。天正13年（1585年）には、四国攻めに参加し、阿波の脇城を攻めています。その後、秀吉の勘気を受けて一時追放されますが、天正18年（1590年）に許され、再び秀吉に仕えました。文禄・慶長の役では秀吉の使者として朝鮮に渡海。文禄4年（1595年）には、伊勢、尾張、三河に16,000石の所領を与えられました。

晩年

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、東軍西軍のどちらにも与せず、戦後、減封処分を受けました。慶長7年（1602年）に死去しましたが、その遺領は召し上げられています。孫の日根野吉明も関ヶ原で東軍に参加したにもかかわらず、所領を減らされて転封となりました。弘就が西軍と内通していたという説もありますが、確実な史料は見つかっていません。

鎧兜について

弘就は、多くの鎧や兜を自作しており、特に「日根野頭形兜」は、曲線的な形状が鉄砲に対して実戦向きであるとされ、多くの武将に愛用されました。徳川家康、真田信繁（幸村）、井伊直政、立花宗茂、千利休などが、日根野頭形を原型として独自の装飾を施して使用したと伝えられています。

日根野弘就を題材とした作品

小説

岩井三四二『浪々を選びて候』(講談社、2003年9月)
岩井三四二『逆ろうて候』(講談社文庫、2007年8月)

関連項目

* 二重堀砦跡

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