鏡 (ラヴェル)

組曲『鏡』について

組曲『鏡』（仏: Miroirs）は、フランスの作曲家モーリス・ラヴェルが1905年に作曲した、全5曲からなるピアノのための組曲です。ラヴェルが30歳の時に完成させたこの作品は、彼の初期のピアノ作品の中でも特に重要な位置を占めており、各曲が独立した個性を持ちながらも、全体として一つの調和を成しています。初演は1906年1月6日、パリの国民音楽協会演奏会において、ピアニストのリカルド・ビニェスによって行われました。

組曲の構成

組曲『鏡』は、全曲で約30分程度の演奏時間を要します。各曲は単独で演奏されることも多く、特に第4曲「道化師の朝の歌」は演奏会で頻繁に取り上げられます。各曲は、それぞれラヴェルが属していた芸術家グループ「アパッシュ」のメンバーに献呈されています。

1. 蛾（Noctuelles）：詩人のレオン＝ポール・ファルグに献呈。複雑なリズムが特徴的で、曲名である「蛾」は、娼婦を暗示しているとも解釈されています。独特の雰囲気を持つ楽曲です。
2. 悲しげな鳥たち（Oiseaux tristes）：初演者であるリカルド・ビニェスに献呈。静かで瞑想的な雰囲気を持つ楽曲で、鳥のさえずりを模倣したような旋律が印象的です。
3. 海原の小舟（Une barque sur l'océan）：画家のポール・ソルドに献呈。波のうねりを思わせるような、壮大で色彩豊かな音楽が展開されます。管弦楽版も存在します。
4. 道化師の朝の歌（Alborada del gracioso）：批評家のミシェル・ディミトリー・カルヴォコレッシに献呈。この曲のみスペイン語の題名を持ち、スペインの舞曲のリズムを取り入れた、華やかでリズミカルな楽曲です。組曲の中で最も人気が高い曲の一つです。
5. 鐘の谷（La vallée des cloches）：作曲家のモーリス・ドラージュに献呈。鐘の音を模倣したような、神秘的で美しい旋律が特徴です。

管弦楽版

ラヴェル自身により、第3曲「海原の小舟」と第4曲「道化師の朝の歌」が管弦楽編曲されています。ラヴェルは「海原の小舟」の出来を好んでいたものの、発表当初はあまり評判が良くなかったため、長らく封印されていました。出版されたのは彼の死後になってからです。

海原の小舟（管弦楽版）

編曲：1906年
初演：1907年2月3日、パリにてガブリエル・ピエルネ指揮、コロンヌ管弦楽団により行われました。
出版：1950年（ラヴェルの生前には出版されませんでした）。
編成：ピッコロ、フルート2、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、バス・クラリネット、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、タムタム、トライアングル、グロッケンシュピール、チェレスタ、ハープ2、弦五部。

道化師の朝の歌（管弦楽版）

編曲：1918年
初演：1919年5月17日、パリにてルネ・バトン指揮、パドルー管弦楽団により行われました。
日本初演：1938年5月25日、東京（日比谷公会堂）にて、ヨーゼフ・ローゼンシュトック指揮、新交響楽団により行われました。
出版：1923年
編成：ピッコロ、フルート2、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ3、大太鼓、小太鼓、タンブリン、シンバル、トライアングル、クロタル、カスタネット、シロフォン、ハープ2、弦五部。

外部リンク

鏡の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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