長沼城 (信濃国)

長沼城（ながぬまじょう）は、現在の長野県長野市穂保に位置していた日本の城郭です。戦国時代には甲斐武田氏と越後上杉氏による川中島の戦いに関連して重要な拠点となり、江戸時代には長沼藩の政務を執る藩庁が置かれました。

歴史

築城と初期の姿

長沼城の築城時期は明確ではありませんが、鎌倉時代からこの地の地頭職を継承してきた太田荘の信濃島津氏が、室町時代に地域に根ざし勢力を拡大する中で最初に築いたものと伝えられています。当初は、堀と土塁によって囲まれた館のような小規模な施設であったと考えられています。

武田氏の支配と改修

弘治3年（1557年）、武田信玄が北信濃への侵攻を開始すると、当時の城主であった信濃島津氏の島津忠直は戦火を避け、北方に位置する大倉城へと逃れました。その後、長沼城は武田氏の支配下に入り、弘治元年（1555年）、永禄4年（1561年）、永禄11年（1568年）と三度にわたる大規模な改修・修築が施されました。特に馬場信春の手により、本格的な城郭へと生まれ変わったとされています。

北信濃攻略の前線基地

永禄11年（1568年）頃には、武田氏の支配下で足軽大将の原与左衛門尉勝重や市川等長らが守将として配置されました。川中島の戦いから7年後には、武田軍の主要拠点が海津城から長沼城へと移され、飯山城をはじめとする北信濃への攻略を進める上での重要な前線基地としての役割を担ったと伝えられています。江戸時代に描かれた「長沼古城の図」によれば、城は平城で、東側は千曲川を天然の防衛線とし、城域の西南には武家屋敷、北方には大手門と冠木門を備えた、小規模ながらも近世城郭に近い総構えの構造を持っていたと推測されています。

武田氏滅亡後の変遷

天正10年（1582年）3月、織田信長による甲州征伐によって武田氏が滅亡すると、長沼城は織田家の家臣である森長可が海津城を拠点として支配するところとなりました。しかし同年6月、本能寺の変で織田信長が倒れると、武田氏の旧領を巡る「天正壬午の乱」が発生します。長沼城は芋川氏などの地元土豪による一揆の攻撃を受け、森長可は撤退。その後、越後から侵攻してきた上杉景勝の支配する城となり、同じく天正10年（1582年）には、かつての城主であった島津忠直が再び入城しています。

安土桃山時代から江戸初期

慶長5年（1600年）、上杉氏が他の地へ移封されるのに伴い、島津氏も会津へと去りました。この頃、長沼城周辺地域は豊臣秀吉の直轄領（蔵入地）となりました。江戸時代に入ると、徳川家康によって新たに川中島藩主となった森忠政（石高13万6500石、居城は海津城）の配下である各務元正・元峯親子がこの城に居住しました。慶長8年（1603年）には、森氏が他の地へ転封となった後、佐久間氏が長沼藩1万8000石の藩主として入城し、長沼城が藩庁として用いられました。

廃城

元禄元年（1688年）、当時の藩主であった佐久間氏が幕府の命令に従わなかったことを理由に改易されると、城主を失った長沼城はそのまま廃城となりました。佐久間氏が長沼藩を治めたのは4代にわたってのことでした。

構造

長沼城は平城であり、東側は千曲川を天然の堀として利用していました。城域は本丸と二の丸を中心に構成されていたと考えられています。

現在の状況と遺構

残念ながら、長沼城の主要な遺構は、度重なる千曲川の氾濫によってその大部分が流失してしまいました。現在、城の跡地とされる場所は貞心寺の付近にあり、そこにはわずかながら盛り土が残っており、かつての本丸跡であったといわれています。その場所には「長沼城跡」と記された石碑が建てられ、他に石塔や祠などが見られます。かつての城域は、東は千曲川まで、西は現在の県道368号線付近まで、北は守田神社のあたりまで広がっていたと考えられています。

関連事項

日本の城一覧
長沼藩
* 太田荘 (信濃国)

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