長野県製薬

長野県製薬株式会社について

長野県製薬株式会社は、長野県木曽郡王滝村に本社を置く医薬品メーカーです。古くから御嶽山の麓で採取される薬草を主成分とした胃腸薬「御岳百草丸」の製造で広く知られています。

歴史と沿革

その歴史は、1849年（嘉永2年）に御嶽山周辺で始まった民間薬「百草」の製造に遡ります。「百草」は、奈良時代から修験者によって伝えられてきた薬で、1782年（天明2年）に御嶽山を訪れた修験者がその製法を伝えたことが起源とされています。

江戸時代の天明年間には、尾張国の覚明行者と武蔵国の普寛行者がそれぞれ御嶽山の登山道を整備し、開山しました。この時、普寛行者が登山道開削に協力した村人に製法を伝授したのが、「百草」の始まりとされています。御嶽山に自生するキハダを原料とした生産が始まったのはこの頃からです。

1874年（明治7年）には、売薬取締法の公布により「百草」は官許による製造となり、1926年〜1930年（昭和初期）には生産が盛んになり、木曽郡内の王滝村、三岳村、木曽福島町で27軒もの製造業者が存在しました。

1936年（昭和11年）には、長野県製薬の前身である木曽製薬工業組合が設立され、現在の生産システムが確立しました。1938年（昭和13年）には、現在の主力製品である「御岳百草丸」の生産が開始されました。

その後、第二次世界大戦中の1941年（昭和16年）には国家総動員法により医薬品が統制の対象となり、1943年（昭和18年）には長野県売薬製造統制株式会社が設立され、木曽製薬工業組合を吸収合併しました。この年を会社の設立年としており、設立時の本社は長野県長野市に置かれ、西筑摩郡福島町（現在の木曽郡木曽町）に福島支店を設け、生産拠点としました。

1944年（昭和19年）には、社名を長野県製薬株式会社に変更しました。1949年（昭和24年）には本社を福島町に移転し、三岳村・王滝村に工場を設立しました。1977年（昭和52年）には本社を現在の所在地である王滝村に移転し、工場を本社のみとして木曽福島町・三岳村の工場を廃止しました。

1982年（昭和57年）には、顆粒タイプの「百草」の生産を開始し、1984年（昭和59年）の長野県西部地震では一時的に生産がストップしました。1992年（平成4年）には新工場の第一期工事が完成、2000年（平成12年）には第二期工事が完成しました。2012年（平成24年）には、株主総会により社長が交代し、6代目の社長として古畑勝三氏が就任しました。

取り扱い製品

長野県製薬では、主に以下の医薬品を製造・販売しています。

胃腸薬
御嶽百草【第2類医薬品】：キハダ樹皮から抽出されたオウバクエキスのみを配合した黒色板状の苦味健胃薬。200年以上の歴史を持つ伝統薬です。
御岳百草丸【第2類医薬品】：1938年（昭和13年）に製造・発売を開始した、オウバクエキスにゲンノショウコ末、センブリ末、コウボク末、ビャクジュツ末などの生薬を配合した黒色丸剤の苦味健胃薬です。当初はオウバクエキス、ゲンノショウコ、ビャクジュツを配合していましたが、その後も改良を重ね、現在に至っています。
御岳百草顆粒ウコン入【第2類医薬品】：黒色丸状の御岳百草丸を顆粒状にしたもので、オウバクエキスに加え、ボレイ末、エンゴサク末、ウコン末を配合した胃腸薬です。ウコンの含有量は多くありません。

その他
六こん風邪薬【指定第2類医薬品】：風邪薬
六こん目薬【第2類医薬品】：目薬
腸草薬【指定第2類医薬品】：便秘薬
八味地黄丸【第2類医薬品】：漢方製剤
百草シップII【第3類医薬品】：湿布薬

研究と検証

長野県製薬は、製品の有効性に関する研究にも力を入れています。

2007年（平成19年）には、星薬科大学との共同研究で、御岳百草丸がヘリコバクターピロリ菌（ピロリ菌）やブドウ球菌の増殖を抑制する効果があることが確認されました。また、有益な大腸菌には抗菌作用を示さないことも確認されました。
2011年（平成23年）には、京都薬科大学との共同研究で、御岳百草丸がピロリ菌に感染したスナネズミの胃炎を軽減する効果があることが動物実験で初めて確認されました。これは、試験管レベルでの実験で確認されていた効果を動物実験で証明したものです。

これらの研究成果は、学会で発表されており、製品の科学的根拠を高めることに貢献しています。

外部リンク

公式ウェブサイト
百草の郷本舗
* 日本薬学会第131年会（静岡）

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